研究課題/領域番号 |
25370076
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
保坂 俊司 中央大学, 総合政策学部, 教授 (80245274)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 大乗仏教文明 / 文明の融合 / 中央アジア宗教変容 / 仏教の衰亡研究 / イスラムへの変貌 / 比較文明論 / 東南アジアイスラム化 / 台湾仏教の現状 |
研究実績の概要 |
インド仏教の衰亡とイスラムの台頭にかんして、インド学的な文献中心の研究に加えて、現地調査、さらには従来当該領域では用いなかった資料を用い、また方法論においても比較文明論、比較宗教学、宗教社会学などの動的な視座を持つ学問を援用して、仏教からイスラム、あるいはヒンドゥー教への宗教の移動について、多角的に考察している。 特に今回は、従来の成果の発表を台湾における国際会議(華梵大学)において、発表し、続いて仏教が高度な文明下において一層隆盛している台湾の現状をあわせて調査した。其の成果も論文集(中国語の翻訳付き)や一般雑誌において、公開した。 さらに、中央アジアにおける仏教の消滅とイスラムの隆盛の変容期について、新たに調査研究することで、インド、東南アジアにおける仏教からイスラムへの信仰の変容運動の起点になる運動要因を実感することができたことは、ウズベキスタン調査(2014年9月)の最大の成果であった。特に、8~13世紀におけるブハラ、サマルカンド、タシケントなどの宗教史の変遷を、文献のみならず現地調査によって確認できたことは、大きな刺激となり、また成果に結びついた。これは今後の研究に大きなヒントを与えてくれた。また、大乗仏教文明の形成やその隆盛に関して、文明論の立場から、従来の当該地域の仏教研究における位置づけの不足を痛感した。つまり中央アジア地域は、通過地点ではなくまさに場以上仏教文明の形成、発展後であり、それが東アジアのみならず、南インド、ペルシアへ伝播していったという発想の転換が、仏教文明研究には付け加えられるべきである、と痛感した。少なくとも南東南アジアのイスラム化を研究するには、中央アジアの変容パターンの把握が不可欠であると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
健康を害して(心筋炎)やや活動に制限が加わったためであるが、秋からは多少持ち直したので、中央アジアの調査研究を行い、私としては成果を得た。というのも、従来疑問であった中央アジアの仏教の滅亡、インド、東南アジアのイスラム化等々という現象が、今回の調査で、線で結ばれるイメージを得たからである。それはここに研究してきた点が、遷都して結び付けられる発想を得たということである。ただし、本格的な調査は本年度に繰り越さざるを得なかった。もちろん、その成果は、拙著などに盛り込んだ。
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今後の研究の推進方策 |
中央アジアにおける仏教からイスラムへの宗教変容期の研究を新たに加えたことで、インド、東南アジアの仏教からイスラムへの改宗の思想的、文化的、さらに言えば文明的な流れを一つの仮説によって結び付けられる可能性を言い出したので、この点をさらに深く研究したい。特に、中央アジアの10世紀前後数世紀の宗教変動期に関して、一層の資料調査や現地調査などを行いたい。ただし、同地域はイスラム過激派の活動もあり、その点が不安定要因である。 同時に東南アジア、インド地域についても積極的に研究を遂行し、遅れを取り戻したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
心筋炎発病のために、行動が制限されたために、現地調査が実行できなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度は、体調がかなり回復したので、ウズベキスタン、インド、バングラデシュ、東南アジアの仏教からイスラム変容のルートを調査する。国際情勢と健康状態を睨みつつ、最大限の効果を上げるように、努力する。
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