本研究は、インド仏教の衰亡に関する受給者一連の研究の一応の帰結となるものであった。従前の研究では西インドや中央アジアなどの仏教衰亡の関する研究を、イスラム勢力との関連によって検討してきたが、今回もこの視点から東部インド(バングラデシュウなどのベンガル、ビハール地域を中心とする)における仏教の衰亡とイスラ勢力の台頭に関して、歴史史料や現地調査、さらには当該地域の宗教ダイナミズムを視野に宗教社会学的な視点を総合した。 しかし、研究の途上において、改めて当該地域の仏教の衰亡には、中央アジア以来のイスラム拡大の運動との結びつき、さらには中央アジアからインドにかけて独自に発展したスーフィズムの存在が、この問題の解決に不可欠である、ということを痛感し、改めて中央アジアのオアシス(特に仏教が盛んであった、サマルカンド、ブハラなど)地域におけるイスラム神秘主義勢力の思想的形成や教団の発展、そしてインドへの伝播について検討した。 というのも、彼の存在が軍事的な破壊による仏教教団のせん滅とは別に、仏教徒をイスラムへと改宗させた信仰上の原動力となったからである、というのが今回の調査による仮設であり、またその立証(完全ではないが)であったからである。研究論文としては、「仏教徒イスラームの連続と非連続」梅村担著・編集『中央アジアの現代的視座』中央大学出版会1-54頁(中央大学出版会、2016年2月)結果は、一般書ではあるが『格差拡大とイスラム教』(プレジデント社2015年4月)さらに、インド仏教終焉を象徴する遺跡として知られるビハール州馬がるぷる近郊にあるビクラムシーラ寺遺跡の調査は、「ビクラムシーラ寺院訪問記」『在家仏教』(在家仏教協会、2016年6月号)40ー49頁に速報を交えて、発表した。今後は、これらの調査研究を総合し、さらに学術誌や一般誌などに成果を発表する。
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