研究課題/領域番号 |
25370077
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
田島 照久 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (50139474)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ドイツ神秘思想 / マリア図像 / スコラ学 / キリスト教神学 / キリスト教図像学 |
研究概要 |
神学・宗教哲学領域と図像学領域に分けて研究実績の概要を研究領域別に記載する。 神学・宗教哲学領域: 「魂の内における神の子の誕生」の教説は、ドイツ神秘思想の代表的思想家マイスター・エックハルトのドイツ語著作で繰り返し説かれる最も中心的なテーマである。とくに「ドイツ語説教2」は「ルカによる福音書第10章第38節」のマリア、マルタの姉妹がイエス一行を迎え入れた話の冒頭の箇所に関する説教であるが、まさに「魂の内における神の子の誕生」のテーマを扱っている典型的な説教であるが、聖母マリアの処女懐胎の教義を下敷きに説かれているこの説教を、エックハルトの中心的教説「離脱」の観点から子細に分析し、ラテン語著作の『知恵の書注解』に展開されているエックハルトの「恩寵論」から聖母マリアの処女懐胎の教義を下敷きにした「離脱の教説」を跡付けることに成功した。この成果は上智大学中世思想研究所主催の依頼講演で公にした。さらにこの研究成果は3月にミュンヘンで行われたエックハルト・ゲゼルシャフト、マックス・ヴェーバー研究所、カトリック・アカデミー共催の「諸宗教の観点からのエックハルト思想」と題された学術大会で「禅とエックハルト」というテーマの依頼講演でドイツ語によって公開した。 図像学領域:「受胎告知」図像の内にはいわばキリスト教の教義的・文化誌的図像コードといったものがふんだんに輻輳した形で存在している。こうしたコード解釈を「イコノグラフィー」(図像学)の研究手法を用いて遂行し、キリスト教教義の民衆レヴェルにおける受容の姿を浮かび上がらせることをめざしているが、本年度は「受胎告知」図像の映像資料および研究論文等の資料を、とくに作例が集中しているドイツ、イタリア各地で収集し、図像の類型化のために出来る限り多くの作例を収集することに努めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
図像学領域研究では初年度の目標として「受胎告知」図像の現地調査と資料収集を設定し行ったが、この研究計画はおおむね予定通りに進行したと判断される。 一方神学・宗教哲学領域のおける研究は、「魂の内における神の子の誕生」の教説をささえ、聖母マリアの処女懐胎の教義を思想化した「離脱の教説」に関して、2つの講演依頼という外的制約もあり、きわめて集中的に研究が進み、思いがけないほどの成果を上げることができたと考えている。幸いに評価も高いものがあった。
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今後の研究の推進方策 |
当初の年次計画通りに推進する予定である。とくに神学・宗教哲学領域のおける研究は基礎的な「離脱の教説」が伝統的恩寵論から解明できたことが次の展開に有効な地平を開いてくれたこともあり、恩寵論のエックハルト的内実である「魂の内における神の子の誕生論」の詳細な分析へと展開して行く心積もりである。 図像学領域研究では、広範な作例の更なる収集と、年次計画に合わせ、十字架の下に福音史家ヨハネとたたずむマリアを描いた「悲しみの聖母」図像を主題的に扱う。この図像の典拠は聖書ではなく、ジャコポーネ・トーディ(13世紀)の詩「スタバート マーテル ドロローサ」(悲しみの聖母はたたずめり)である。後年ペルゴレージ、、ロッシーニ、、ヴェルディなどがこぞってこの詩に曲をつけるなど中世以来民衆に深く浸透した詩である。この詩の形象化として「悲しみの聖母」図像を考察する。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初の計画ではXP搭載のPCが古くなったため新たなPCを購入する予定であったが、機種選定等の事情で第2研究年度に購入を延期したために予算上の繰り越しが生じることとなった。 XPのバックアップが終了したこともあり、本年度はモニターを含めたあらたなPC購入が必須となる。今年度の予算も含め研究のPC環境をトータルに改善する予定である。また海外調査の回数も増やす予定である。
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