研究課題/領域番号 |
25370079
|
研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
小原 克博 同志社大学, 神学部, 教授 (70288596)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 環境文化 / エネルギー政策 / 宗教 / 自然観 / 原発 / 未来世代 / 倫理 / 東日本大震災 |
研究実績の概要 |
原発を筆頭に、科学技術がもたらすリスクは人類的なものである。宗教の有無、違いにかかわらず、そのリスクを考え、対応できる倫理的通路を多様に見出すために、諸宗教は固有の伝統を活用しつつ、相互に交響する宗教倫理的「公共性」を展開すべきである。その手がかりとなる点を、以下のように得ることができた。 (1)エネルギー問題と「食」:人間の肥大化する欲求(科学技術がそれを牽引している)に対応するエネルギーの大量消費や環境破壊は、広い意味での「食」にかかわる問題である。食のグローバル化が進む一方、先進国での飽食、発展途上国での栄養不足・餓死といった食の不平等・不公正(犠牲のシステム)は21世紀においても改まってはいない。宗教史(人類史)において「犠牲」は社会システムを考える上で欠かすことのできない古典的問いであるが、エネルギー問題を考える際、「犠牲」の現代的な意義を探求する必要がある。 (2)「公共性」変革のトポスとしての宗教倫理:世俗社会の「公共性」の中に宗教を位置づけるだけでは十分ではない。むしろ、「公共性」を批判的に変革する力を宗教伝統(宗教倫理)の中に見出していくべきであろう。そうすることによって、「現代世代」の「人間」の利益を最大化することを前提とする近代的枠組み(公共性)を相対化・批判できる倫理的視座を得ることができる。その基盤として、食の倫理、犠牲の倫理、記憶の倫理を統合する「不在者の倫理」(Ethics of the Absent)を具体的に展開していく必要がある。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
エネルギー政策や科学技術に対する包括的かつ批判的な視座を提供するために、宗教研究(特に宗教倫理)が着眼すべきポイントを明確化することができた。
|
今後の研究の推進方策 |
最終年度において、まとまった成果をあらわすことができるよう、論点をしっかりと絞り込み、先行研究には見られない、鋭角的な問題提起ができるよう心がける。
|
次年度使用額が生じた理由 |
計画は順調に進んでいるが、予定していた旅費や研究文献購入費用の一部が他の経費でまかなえたため、差額が生じた。
|
次年度使用額の使用計画 |
年度計画に従って研究を進め、差額を考慮した助成金運用を行いたい。
|