研究課題/領域番号 |
25370088
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
清水 靖久 九州大学, 比較社会文化研究科(研究院), 教授 (00170986)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 丸山真男 / 戦後民主主義 |
研究概要 |
丸山真男と戦後民主主義の研究は、今年度、戦争直後の戦後民主主義の原点と1960年代末の戦後民主主義の議論とを焦点としてきた。1946年3月に「超国家主義の論理と心理」を書いた丸山は、それまで敗戦占領下の民主主義万々歳の風潮に反感と懐疑を抱いていたが、政府憲法草案要綱の人民主権に驚くとともに、国体の崩壊と日本国民の自由な主体について同論文末尾で論じた。しかし戦後民主主義以前というべき丸山の思想は、戦後半年余りの迷いの時期だけでなく、なお数年続いた。 1969年3月に戦後民主主義否定の高まりを看取した丸山は、それまでの東大紛争の経過を振返るとともに、超国家主義に抵抗した戦中の東大法学部の記憶を反芻した。戦後民主主義とは、戦後の憲法体系をいうのか、また現実の政治体制をいうのか、民主主義を名とする運動の現実をいうのか、デモクラシイの理念をいうのか、その位は弁別して議論してほしいと書いた丸山の思いがやがて整えられて、民主主義は理念と運動と制度との三位一体であり永久革命だという持説になった。 この研究は、そのような丸山と戦後民主主義との関係を解明するために、丸山を追及した学生の言い分も知ろうとするなど、証言と資料を探し求めてきた。不便さで定評があった東京女子大学図書館の丸山眞男文庫も利用したが、同大学が丸山の著作権を遺贈された以上は図書館が著作物の半分以下しか複写を許可しないことを改めてほしいと願うなど、研究条件の改善も試みてきた。 戦後民主主義と非暴力思想には、欠点もあったし失望も生じたが、積極的な平和主義と称するものが日本社会を変えていくなかで、丸山真男の著作とともに顧みる価値があると感じる。そのことが実感できるような研究をさらに進めたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
丸山真男の政治思想を戦後民主主義との関連で思想史的に解明するという研究目的はおおむね順調に達成できている。
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今後の研究の推進方策 |
戦後民主主義と非暴力思想には、丸山真男の著作とともに顧みる価値がある。そのことが実感できるような研究をさらに進めたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
1960年代の『日本読書新聞』復刻版(不二出版)の刊行を待っていたが年度内に刊行されなかったなど、研究遂行に必要な資料の購入が計画通りに進まなかったため。 今後はもっと計画的に資料を購入する。
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