この研究では、丸山真男の政治思想を戦後民主主義との関連で思想史的に解明してきた。丸山は、戦後民主主義は虚妄だったと論じられるようになった1964年、「大日本帝国の「実在」よりも戦後民主主義の「虚妄」の方に賭ける」と記した。丸山にとって大日本帝国は良心の自由を侵す超国家主義の体制だったが、それからの歴史的転換において人民主権の思想を選んでから、たえず民主化する「永久革命」として民主主義を説いてきた。戦後民主主義に「虚妄」の面があったことはよく知りながら、民主主義を日本社会に根づかせるための思想的営為を続けたが、大日本帝国を経験していない若い世代には伝わりにくかったことを明らかにした。
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