研究課題/領域番号 |
25370089
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
野崎 充彦 大阪市立大学, 大学院文学研究科, 教授 (90244623)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 士大夫 / 儒統 / 『東儒師友録』 / 民俗宗教 / 国際研究者交流 |
研究実績の概要 |
研究テーマ「朝鮮前期士大夫の民族文化観形成ー対外・対内経験との関わりから」を推進するため、次の二つの面からアプローチを進めた。 ①『朝鮮儒賢淵源録』『道学淵源録』『東国名賢言行録』『朝鮮儒教淵源』『東儒淵源』など開化期や近現代には多くの朝鮮儒統に関する書籍が刊行されているが、それらの原型をなしたのは、17世紀後半に成立した『東儒師友録』である。新羅・高麗から朝鮮中期に至る朝鮮儒統の系統をはじめて体系的に整理した本書は、膨大な文献を駆使して朝鮮士大夫間の師弟関係や学問的系譜を明らかにしたものだが、そこに引用された諸文献を可能な限り原典にあたって検討し、当時の士大夫たちの自己認識を追体験するよう試みた結果、時には中国の影が色濃く投影されていたことを見出した。その一例として、1567年に朝鮮を訪れた天使(中国皇帝の使者)である許國・魏時亮があげられる。この時、両使は「東方亦た能く孔孟の心学を知る者あらんや」と問うたので、礼曹と李退渓らが検討した結果、新羅の薛聡や崔致遠ら十六人を朝鮮儒統の冒頭に据えたのである。このことは儒統のような朝鮮士大夫の核心的アイデンテティの確立におおいても対内的な要素のみならず、「外圧」のような対外的なファクターに大きく左右されていたことを論証した。 ②士大夫社会における儒統の形成を表、もしくは「顕教」とすれば、裏もしくは「密教」としての民俗宗教がある。なかでも風水とシャーマニズムは二大要素といっても過言ではないが、その両者を介在するものとしての仏教や道教の役割にも大きなものがあり、その関連様相は現代にもまで影響を及ぼしていることを考察した。 ③韓中比較文化やソウル都市史研究者を招聘し、研究交流を図った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要で述べた①朝鮮士大夫の儒統の形成について、『朝鮮儒教淵源』や『東儒師友録』などを中心に、儒統形成過程を分析した論考を執筆した(刊行は2015年度の予定) ②の民俗宗教に関しては、中世から現代に至る朝鮮風水思想の特性を考察した論考を執筆するとともに、その成果を韓国道教文化学会主催の国際学術大会において招請発表するする予定である。
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今後の研究の推進方策 |
朝鮮儒統の形成過程については先行研究が乏しいこともあって取り組むべき課題が少なくないので、基礎資料の収集や精読のみならず、関連資料の検討も鋭意進めていく。 民俗宗教についてはフィールド調査の実施にも取り組む予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品の購入費に若干の見込み違いがあったため。
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次年度使用額の使用計画 |
文房具の購入などに用いる予定である。
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