最終年度にあたる平成27年度では以下の4種の研究成果を得た。 ①カッパドキア教父における「洞窟の比喩」の受容の実態を、前年度までの成果を踏まえたテキスト研究において跡付けた。まず、直接には「洞窟」表象が現れないバシレイオスとナジアンゾスのグレゴリオスについて、前者では修道的観点から、後者では政治学と神学(とりわけ経綸(オイコノミア)論)との交錯する観点からプラトンを始めとするギリシア哲学の影響がどこまで彼に及んでいたのかを明確化し得た。 ②以上を踏まえた上で、ニュッサのグレゴリオスにおける「太陽=神の洞窟への降下」という「洞窟の比喩」の書き換えを、当該テキストにおいて正確に跡付け、その多角的な解釈を試みた。前年度までに解明されたギリシア哲学圏における「洞窟の比喩」のモチーフが、どのように、また、どこまでキリスト教思想圏における救済論的モチーフへと変容したのかを解明することができた。 ③前2年度においても、その都度、隣接するテーマごとの総観はなされてきたが、最終年度にあっては、達成された個々の考察結果を「洞窟の比喩のギリシア教父における受容・変容史」という統一的な理解へとさらに鍛え上げていくことができた。具体的には、本研究によって考察された全テキストについて、「洞窟」と「太陽」という二つの鍵概念(及びその派生概念)の相互連関とそれが見出される文脈、さらにはトポロジカルな「上昇」「下降」という思考類型が果たす理念的働きが、ギリシア哲学からギリシア教父思想に至る過程でどのように変移していったかが克明に跡付けられた。 ④以上のすべての研究成果に基づき纏められた私の英語論文が高く評価され、平成27年度にBrill社から刊行された各国を代表する専門研究者による英文論文集に掲載された。その結果、本研究の成果を広く海外の多くの研究者に提供することができた。
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