本研究の成果としては、プラトンの主著『国家』篇の中でも特によく知られている「洞窟の比喩」の主要モチーフが、アリストテレスからヘレニズム期を経て、初期キリスト教思想にどのような影響を与え、同時にどのような変容を被ったかを、ギリシア哲学とギリシア教父の双方の文献において具体的に検証・考察し得たこと、とりわけ哲人王統治という政治的な文脈で解釈されてきた「洞窟」への帰還(下降)というモチーフが、キリストによる救済論・経綸(オイコノミア)論へと変容していく経緯を詳細に跡付けられたこと、またそれらの成果を国内外において広く公表し得たことが挙げられる。
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