研究課題/領域番号 |
25370098
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研究機関 | 豊田工業高等専門学校 |
研究代表者 |
北野 孝志 豊田工業高等専門学校, 一般学科, 教授 (20390461)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 技術哲学 / ドイツ / VDI / 「人間と技術」 / クラウス・トゥッヘル / 技術倫理 |
研究実績の概要 |
まずは前年度の研究の成果として、応用哲学会で「戦争と技術哲学―技術哲学への一視点」と題する研究発表を行った。そこでは、第一次世界大戦、第二次世界大戦をはさんで、ドイツや日本での技術哲学の歴史がどのように展開されたのかを扱った。 1960年代から1970年代にかけての技術哲学の歴史に焦点を当て、研究した。この時期は、第二次世界大戦後戦争への反省も踏まえつつも、新しい技術が次々と現れ、技術哲学が大きく転換する過渡期と言えるが、日本では紹介されることもほとんどなく、必ずしも注目されてこなかった。そこで、この時期に出版された技術哲学に関する資料を調査し、東京の国立国会図書館やドイツ・ベルリンの国立図書館を利用して閲覧したり、必要に応じてコピーを行ったりした。その過程で、1960年代以降ドイツ技術者協会(VDI)の中央部会「人間と技術」で活躍したクラウス・トゥッヘルやいわゆる「VDIの哲学者たち」の活動について情報を得るために、ドイツ・デュッセルドルフのVDI本部を訪問しインタビューも行った。また、ドイツ留学時代からの友人で現在ハーゲン放送大学のべドルフ教授の協力も得て、さらなる資料を手に入れたり、研究に関する情報交換を行ったりした。 その成果として、60年代や70年代の技術哲学に関する研究が必ずしも意義のないものではなく、アメリカの技術哲学や、さらには技術者倫理へとつながる発展にも少なからず影響を与えており、一方でそうしたアメリカでの技術者倫理の影響が逆にドイツにもたらされた際にも、重要な意義を持つものとして60年代・70年代の技術哲学の影響が見られることが分かった。こうした成果について、「技術哲学の過渡期としての60~70年代」と題して学会発表することになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前年度の遅れを取り戻そうと、東京やドイツでの資料調査・収集等も年2回行ったが、調べてみると過渡期と言われる60年代・70年代にあって技術哲学に関する資料が思った以上に多くあることが分かり、それらは日本で紹介されていないこともあり、予想以上に時間がかかってしまっている。さらには、研究協力者との作業についても、当初の予定以上にははかどっておらず、その反省をもとにさらに効率的に研究が進むように相談しているところである。
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今後の研究の推進方策 |
今後も資料調査・収集を続け、次年度の研究書出版に向け努力していくが、場合によっては次年度中の出版にはこぎつかない可能性もある。しかし、これまでの研究の蓄積をまとまった形で公表することは日本の技術哲学研究の発展のためにも極めて重要だと考えており、それに向けてテーマを絞ってまとめる、あるいはさらに研究を続けて最終的な出版を目指す等、可能な対応を全て検討したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
資料調査・収集の過程で、研究対象となる資料が予想以上に多くあることが分かり、旅費(東京の国立国会図書館やドイツ・ベルリンの国立図書館での調査等)が予定をオーバーしたが、一方研究協力者との作業については効率的に進めることができず、昨年度の遅れを取り戻すまでには至らなかったため、謝金の分で予算を使い切ることができなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
研究協力者との連携をはかり、より効率的に研究が進むようにし、謝金を計画的に使用していく一方で、資料調査や資料収集のためにもう少し図書の購入や旅費に予算を割いて、研究の遅れを取り戻すように努力する。
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