研究課題/領域番号 |
25370104
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
市川 明 大阪大学, 文学研究科, 名誉教授 (00151465)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ブレヒト / チャールズ・ロートン / クルト・ヴァイル / 教育劇 / 叙事詩的演劇 / ベルリーナー・アンサンブル |
研究概要 |
本年度の主要な課題は、ブレヒトの教育劇がブレヒトの演劇・上演理論の形成にどのような影響を与え、演出家としての実践の土台を築いたかを探ることと、俳優との共同作業や討論の中でワークインプログレスの形で台本が進化していく過程を追うことにあった。具体的には第1に、『イエスマン』『ノーマン』の研究に集中的に取り組み、アウクスブルク、シカゴ、大阪の3都市を結ぶ国際プロジェクト「ブレヒト・ハイスリー」の日本代表として、台本、演出を担当し『谷行/イエスマン』の上演に力を注いだ。3都市をライブとオンライン・ストリーミングで結ぶ世界初の試みで、2月に日本公演とドイツ公演が実現した。この作業の中で原作となった能『谷行』とクルト・ワイルの学校オペラ『イエスマン』、音楽のないリブレットとなったブレヒトの教育劇『イエスマン/ノーマン』の比較や異文化接触に関して調査・研究を進め、演出家としてブレヒトが目指した「了解」という中心テーマに迫った。 第2に、『ガリレイの生涯』の3つの稿、デンマーク稿、アメリカ稿、ベルリン稿の比較をする中で、それぞれの稿の世界初演である、スイスとアメリカ、ベルリンの上演を追った。スイスの上演が感情同化的な演出で、ブレヒトの意に沿ったものでなかったことや、ロートン、ブッシュとの稽古の様子を記した記録を調べ、ブレヒトの叙事詩的演劇の理論が、稽古の中で検証され、改良されていったことを示すことができた。ガリレオの長い自己断罪のせりふを3つの稿で比較することで、上演における効果をブレヒトがどのように考えて改作していったのかを細かに指摘した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
スイス(チューリヒ、ベルン)に調査に出かけ、ブレヒトの世界初演の資料などを集めることができて、新たな研究が進んでいる。ベルリーナー・アンサンブルとブレヒト文書館でブレヒトの演出の状況を記した詳細な記録をもとに研究を進めている。ドイツ(アウクスブルク)で『イエスマン/ノーマン』についての講演と舞台上演を行い、教育劇、音楽劇の考察を深めることができた・
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今後の研究の推進方策 |
ベルリン、チューリヒ、ベルンに調査に出かけ、亡命期に書かれた作品と上演の関係を探る。12月に行われる阪神ドイツ文学会のシンポジウムで「ブレヒトとスイス」のテーマで報告し、チューリヒ劇場におけるブレヒト初演について研究する。『肝っ玉おっ母とその子供たち』の主役をチューリヒとベルリンで演じたギーゼとヴァイゲルの俳優術を比較しながら、演出家ブレヒトの演劇理論に迫る。
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