「言語/形象」の本質的関係を明らかにしようとする河原温についての研究は、平成25、26年度は「作品に即した形態論的分析」と「文明史に即したメディア論的分析」を中心に開始した。 「作品に即した形態論的分析」では、国内外の河原作品にわたっての具体的な細部検証を行なった。タイポグラフィーとしてあらわれる文字や、ファイリング方法や、函をふくむ書物の形態、葉書や電報という通信形態をめぐって考察した。また、『I WENT』シリーズについての現場追跡調査もこれに加わる。さらに、他の現代美術の中から、河原温と重要な関連をもつ作品を探査した。 「文明史に即したメディア論的分析」では、人類史における記録芸術の痕跡やメディア文技術史上での河原作品の成立の背景を考察した。ベルリン、フランクフルトの通信博物館での調査などがこれにあたる。 続いて、「作家主体に即した研究」として、平成27年度以降、弘子夫人からの聞き取りという河原温研究史にとって初めての作業を行ない、この証言を整理し、分析することを中心に進めた。同様に貴重な証言は、日本時代から親しい美術家・岡崎和郎氏、概念芸術において大きな契機を作家に与えたカスパー・ケーニヒ氏などからも得られた。 さらに、日本時代の河原温自身の言説との関係について洞察することによって「言語」と「形象」の関係について河原温がもっていた思想は全貌を現わしつつある。その全体像を把握するにあたって、本研究は以上の分析を束ねるべく、河原温への考察を含む講義・公開討議を随時行なった。
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