平成26年度は、前年度に開始した先行研究の文献収集を継続すると共に、ピアノによる録音(ショパンのワルツおよびベートーヴェンのソナタ)297点を精査し、とりわけ電気録音以前と以後における変化、さらにはその後の、20世紀における大きな断絶を、テンポ変化(アゴーギク)、ペダルの持続、装飾音、強弱法などの観点から分析し整理を行った。これまでの調査においては、とりわけリスレールやホフマンの遺した録音が様々な特徴に富んでおり、最終年度となる27年度に集中的に検討することになるはずである。現在までにおいて明らかになりつつあるのは、当初の予想通り電気録音の登場前と登場後では演奏様式に大きな差があること、さらに20世紀後半の1950年代、および1990年頃に様式変化が起こっていると考えられることである。この原因については単にメディアの変化にとどまらない複合的な要因が予測され、当初の範囲を越えてはいるものの、27年度にも継続的に考察を続けたい。 また、本年度においては、SP時代の資料を収集・分析するだけでなく、アメリカ議会図書館ほかのインターネットによる音源資料がきわめて有効であることが判明したために、研究対象自体がさらに拡がることが予想される。また、本年度は先行研究の読み込みに加えて、内外の研究者と議論を重ねて、分析方法の洗練を目指した。主観的な判断と客観的な判断の調停という点においてはまだ改善の余地がかなりあるため、最終的な成果のためには本年度も続けて方法論の探求を行う予定である。
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