研究課題/領域番号 |
25370116
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東京工芸大学 |
研究代表者 |
平山 敬二 東京工芸大学, 芸術学部, 教授 (50189867)
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研究分担者 |
加藤 泰史 一橋大学, 社会(科)学研究科, 教授 (90183780)
長澤 麻子 立命館大学, 文学部, 准教授 (30611628)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 自然美学 / 環境美学 / マルティン・ゼール / アンゲリーカ・クレプス / 現代ドイツ哲学 / 自然倫理学 / 国際研究者交流 / 国際情報交換 |
研究概要 |
本研究の第1年度に当たる本年度においては、当初の研究計画に従い、夏季及び冬季にそれぞれ2日間にわたる計2回の合同研究会を東京において開催した。第1回合同研究会は2013年8月3日(土)-4日(日)に東京工芸大学において開催され、第1日目は本研究課題参加メンバーによる合同研究会議、第2日目は高畑祐人氏(研究協力者)の研究発表(テーマ:「クレプス自然倫理学構想における『情感的観照』論の位置づけ」)を中心に、クレプス自然倫理学を巡る研究者相互の意見交換が行われた。冬季の第2回合同研究会は、計画されたマルティン・ゼール氏(フランクフルト大学教授)の招聘が実行に移され、ゼール氏の2つの講演を中心に、2013年12月13(土)-14(日)の2日間に亘って一橋大学において自然美学を巡る公開コロキウムとして開催された。ゼール氏の講演題目は12月13日が『カントにおける自然美と芸術美の関係』(高畑祐人訳)、12月14日が『自然を承認するさまざまな次元』(徳地真弥訳)であり、それぞれの講演を巡って、本研究課題参加研究者全員による極めて充実した活発な意見交換が行われた。また2013年12月25日付けにて、本研究計画で予定されたM.ゼール氏の著書『Eine Aesthetik der Natur』の日本語翻訳書『自然美学』を法政大学出版局から出版するに至った。これは日本における哲学的自然美研究において画期的な意義を有するものと言えるであろう。 その他に2013年12月21日(土)-22日(日)に東京工芸大学にて開催された日本ヘーゲル学会におけるシンポジウム「自然美の哲学―自然美学の哲学的批判から環境美学の構築へ」において、本研究課題の参加協力メンバーの小川真人、加藤泰史(研究分担者)、平山敬二(研究代表者)の3名が、それぞれの本年度における研究成果に基づき、パネリストとしての研究発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究計画の第1年度における中心的な研究課題は「現代ドイツ哲学における自然美論の基礎的研究」であったが、現代ドイツ系哲学界において極めて注目されているマルティン・ゼール氏(フランクフルト大学教授)の自然美学論ならびにアンゲリーカ・クレプス氏(バーゼル大学教授)の自然倫理学構想についての研究において特に充実した研究成果があり、おおむね当初の研究目的を果たせたと考えることができる。特にマルティン・ゼール氏の研究協力ならびに同氏を招聘しての日本におけるコロキウムの開催を実現できたこと、また同氏の著書の日本語翻訳本『自然美学』の出版を今年度に実現できたことは、むしろ当初の計画以上の大きな研究目的の達成であると言える。また日本ヘーゲル学会でのシンポジウム「自然美の哲学―自然美学の哲学的批判から環境美学の構築へ」における研究成果の発表を本研究課題の参加メンバーによって実現できた点も、本研究課題の第1年度の研究目的に沿うものであり、これもまた研究目的の達成として評価できるものである。
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今後の研究の推進方策 |
本研究計画第2年度においては、第1年度においてなされた現代ドイツ哲学における自然美論の基礎的研究に基づいて、現代ドイツ自然美論に関する発展的研究を展開する。具体的には第1年度における美学芸術学研究者と哲学倫理学研究者との共同研究の成果を踏まえ、環境美学的側面と環境倫理学的側面との対比的発展的研究に基づき、従来の環境美学の枠組みを越える新たな哲学的環境美学への展開を試みる。また日本的自然観とドイツ的自然観の対比的研究に基づき、現代ドイツにおける環境美学思想の日本的風土における環境美学思想確立に関する有効性について検証する。第1年度と同様に夏と冬との2回、それぞれ2日間に亘る共同研究会を開催し、計画的な研究発表と意見交換の機会を確保する。またドイツ人研究者との研究協力体制を維持し、第1年度に引き続きドイツ人研究協力者との直接的な学術討論および意見交換の機会を設定する。 本研究計画の最終年度にあたる第3年度においては、第2年度までの研究成果を踏まえつつ、それまでに達成された研究成果の発表とさらなる研究の動的な発展を期して、国際的な学術コロキウムを企画開催する。以上は本研究課題の当初の研究目的ならびに研究計画に沿うものであり、第1年度におけるおおむね順調な研究課題遂行を基に、基本的には当初の計画通りに研究計画を遂行していく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
ドイツ人研究者の招聘旅費および講演依頼料(謝金)ならびにドイツ語講演原稿の日本語への翻訳料(謝金)に、当初の計画以上の出費が必要となったため、計画していた関連図書購入費(物品費)の一部を所属機関の個人研究費で可能な範囲で賄うこととした。また次年度においても、旅費ならびに謝金が当初の計画よりも多く必要になると予想されるため、当初計画された図書購入費の一部を抑制する形で、次年度の旅費および謝金のための次年度使用額として処理することとした。 第2年度においても、当初の計画よりも旅費ならびに謝金に多くの経費が必要となることが予想されるため、その分の補充に充てることが計画されている。
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