研究課題/領域番号 |
25370116
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研究機関 | 東京工芸大学 |
研究代表者 |
平山 敬二 東京工芸大学, 芸術学部, 教授 (50189867)
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研究分担者 |
加藤 泰史 一橋大学, 社会(科)学研究科, 教授 (90183780)
長澤 麻子 立命館大学, 文学部, 准教授 (30611628)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 自然美学 / 環境美学 / 自然倫理学 / 環境倫理学 / 国債研究者交流 / 国際情報交換 / 自然美の哲学 / ドイツ自然美学 |
研究実績の概要 |
平成26年度は、本研究計画の第2年度目に当たる年度であったが、ほぼ当初の研究計画通りに遂行することができた。第1年度において遂行された現代ドイツ哲学における自然美論の基礎的研究に基づいて、第2年度においてはその発展的研究が試みられた。具体的には第1年度における現代ドイツ哲学における自然美論についての共同研究の成果を踏まえ、環境美学的側面と環境倫理学的側面との接合および統合関係についての、従来の枠組みを越える哲学的環境美学の可能性が探求された。また日本的自然観とドイツ的自然観の対比的研究に基づき、現代ドイツにおける環境美学思想の日本的風土における有効性についての検証が、日本の哲学者和辻哲郎の『風土』を巡る研究として遂行された。 当初の研究計画通り、夏と冬との2回に亘り、それぞれ2日間の共同研究会を東京工芸大学において開催した。そこでの主な各研究者の研究発表内容は以下のようである。2014年8月2日-3日:加藤泰史「自然美学の諸問題」、阿部美由起「ベーメの『雰囲気』における「美しさ」―ゼールの美の概念との比較において―」、長澤麻子「『美的環境』とはなにか?―W.ベンヤミンのアウラ概念を手がかりに」、2015年2月21日-22日:阿部美由起「ベーメによるゼールの『自然美学』解釈」、平山敬二「和辻哲郎の『風土論』再考」、長澤麻子「美とAura―現代社会におけるAuraの可能性について」。また当初の計画に従い本年度においてもドイツの研究者との共同研究を遂行し、研究代表者平山は2014年11月5日にミュンヘンにおいてヘンクマン教授との自然美学を巡るコロキウム「自然美学の現在」を実施した。これら以外にも、本研究課題参加メンバーは、それぞれの研究成果を日本ヘーゲル学会、日本シェリング学会をはじめ、さまざまな学会ならびに学術雑誌等にその研究成果を個別に発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の当初の研究計画において設定された研究目的は、以下の5点に集約されていた。(1)現代ドイツ哲学における自然美学研究を環境美学の観点から徹底して推し進めること。(2)ドイツにおける従来の伝統的自然美論と現代における自然美論とを対比的に研究し、両者の相違点を明らかにすること。(3)ドイツの伝統的および現代的な自然美論の有効性を、日本的自然観との対比研究によって検証すること。(4)倫理学研究者と美学研究者との共同研究を通して、従来の環境美学や環境倫理学の枠組みを越える新たな環境美学の構築の可能性を探求すること。(5)ドイツ人研究者と日本人研究者との環境美学および自然美学を巡る共同研究により、東洋と西洋との風土的相違がどのように自然美学研究に影響するのかについて検証すること。この研究目的に応じて、第1年度目はそれぞれに応じる基礎的研究が遂行されたが、第2年度目に当たる本年度においては、それらの発展的研究が目指され、特に次のような3点が年次計画の中に目標として設定されていた。(1)日本的自然観倫理観との相対的対比的統合研究、(2)環境美学と環境倫理学との対比的統合研究、(3)環境美学における哲学的自然美論の発展的研究。第2年度に当たる本年度においては、これらの目的に沿った研究が着実に遂行され、その研究成果が、本研究課題メンバーである各研究者によって、日本ヘーゲル学会、日本シェリング協会等の諸学会にて逐次発表されると同時に、さまざまな学術雑誌においても、その研究成果が発表されるに至っている。以上のようなことから、本研究課題の本年度までにおける研究計画は、おおむね順調に進展していると考えることができる。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は本研究計画の第3年度でありまた最終年度に当たるが、おおむね順調に進展してきた第2年度までの研究成果を踏まえつつ、さらなる研究の動的な展開を期す。第1年度の基礎的研究、第2年度の発展的研究の上に、第3年度は最終年度としての総合的研究が目指される。本研究課題参加者の共同研究会の在り方自身は、当初の研究計画の通り、夏と冬とのそれぞれ2日間に亘る合同の研究会を計画実施する予定であるが、それとともに、当初の研究計画に従って、日本において自然美学を巡る国際学術コロキウムを企画開催する。すでに準備は始まっているが、当初予定していたドイツ人研究者3名のうち多忙や高齢などのために来日が難しいと思われる研究者が出ることが予想されるが、その場合には、それに代わる人選を考え、できるだけ当初の計画に沿った国際学術コロキウムとなるように準備していく予定である。またもしも必要な場合には、日本側から研究代表者あるいは研究分担者が直接当該のドイツ人研究者を訪問し、その不足分を補うことも考える。この国際学術コロキウムは、原則的に公開するものとし、またこのコロキウムの成果も含めた形で、最終的な本研究計画の研究成果を論文集の形で編集し出版することの可能性についても検討を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画最終年度に当たる平成27年度に予定している自然美学を巡る国際学術コロキウムのためのドイツ人研究者の招聘等を含む準備に、十分な予算を確保するために、平成26年度の出費を次年度に一部回す必要が生じた。また、研究協力者1名が不慮のけがによる負傷のため今年度の研究会に参加できなくなり、予定していた旅費が必要なくなった。
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次年度使用額の使用計画 |
最終年度に計画されている自然美学を巡る国際学術コロキウムのためのドイツ人研究者数名の日本への招聘費用ならびに、その準備的打ち合わせのために必要と考えられる研究代表者および研究分担者1名のドイツ訪問のための旅費として使用する計画である。
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