研究課題/領域番号 |
25370117
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研究機関 | 昭和音楽大学 |
研究代表者 |
羽石 英里 昭和音楽大学, 音楽学部, 教授 (70350684)
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研究分担者 |
岸本 宏子 昭和音楽大学, 音楽学部, 教授 (10107336)
河原 英紀 和歌山大学, システム工学部, 教授 (40294300)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 歌唱 / 身体感覚 / 横隔膜 / MRI / 音響特性 / 声楽教育 / 声道 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、歌唱時における身体感覚とそれに対応する解剖学的・生理学的・音響学的現象との対応関係を検証し、歌唱技術の解明および演奏技術の向上に貢献することである。25年度中は歌手を対象とした身体感覚についてのインタビューを行い、その結果をもとに、横隔膜の動きにしぼってMRI撮像実験を行った。26年度は、そのMRIデータを用いて、動画上の横隔膜の動きを継時的に分析する方法を検討し、結果の一部を、Voice Foundationの学術大会(フィラデルフィア、26年5月末ー6月)において口頭にて発表した。発表終了後には活発な質疑応答が行われた。これまで、横隔膜の動きは歌手の感覚を通して捉えられてきたが、今回、それをMRI動画で実際に確認できたことに対し、研究者や声楽家らが高い関心を寄せていることがうかがわれた。 横隔膜のコントロールが喉づめの発声を回避させ、健康的な発声法の獲得に貢献する可能性を持つことは、先行研究からも示唆されている。そこで、26年度には、横隔膜に加え、声道(声帯から上の咽頭、口腔、鼻腔等)のMRI動画撮像も行なった。被験者の範囲をオペラ以外の分野のソプラノ歌手やテノール歌手にも広げ、インタビューも行った。これらMRI実験の一部と音響分析については、27年8月末から9月初めにかけてフィレンツエで開催される第11回 Pevoc(Pan-European Voice Conference)での口頭発表が決定している。なお、インタビュー全体のまとめについては、日本音声言語医学会で発表した(福岡、26年10月)。 音響分析に関しては、歌唱音声の基本周波数の分析法に新しい発見があり、その方法の提案を日本音響学会で行った(27年3月)。また、実時間で音声から発声時の声道形状を表示する方法が実現した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
MRIによる横隔膜の可視化を行い、その動きを画像分析ソフトを使用して量的に提示することができたので、歌唱技術の新たな分析方法の提案が可能となった。また、歌唱音声の音響分析についても、実時間で音声から発声時の声道形状をコンピュータで表示する方法が実現するという、当初の予定を超える大きな成果が得られた。これは、さらに改良を重ねることによって、声楽教育や健康的な発声法の指導ツールとして活用できる可能性をもっている。
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今後の研究の推進方策 |
歌唱時の横隔膜と声道のMRI画像分析および歌唱音声の分析とそれを応用したシステムの改良をさらにすすめていく。25年度のアメリカと日本での成果発表に続き、26年度はヨーロッパでも本研究の成果を伝え、内外の専門家の意見を広くつのりたい。これと平行して一般社会に還元する方向でも成果発表を行い、声楽教育や健康な発声法等の指導に役立つ研究として発展させていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
26年度中に投稿した論文が査読中で、年度内に掲載料が必要になる可能性があった(まだ結果を待っている)。また、26年度には歌唱音声の基本周波数の分析法を発見し、実時間で音声から発声時の声道形状を表示する方法の開発を行ったので、予算を次年度に繰り越して、その本格的な分析と応用システムの評価に備えることとした。
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次年度使用額の使用計画 |
論文採択の場合は掲載料、その他、音響分析と応用システムの評価、成果発表等に使用する予定である。
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