研究課題/領域番号 |
25370122
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研究機関 | 四国大学 |
研究代表者 |
太田 剛 四国大学, 文学部, 教授 (30461362)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 石碑拓本採取 / 書道作品と石碑文の解読 / 近世の儒学者 / 新たな文化財の発掘 / 地域住民の書道文化への意識喚起 / 地方史と全国史との結合 |
研究実績の概要 |
讃岐関係では、大阪の泊園記念会から依頼を受けて、平成26年10月に関西大学で藤澤東ガイ・南岳の石碑、書作品、交友関係について講演した。藤澤家関連の香川県での資料研究が今まで乏しかったので、泊園記念会に新情報の提供ができた。またこれとは別に、香川県三木町の幕末儒医である神内喬木の漢文集の解読と神内家墓碑調査を行ない、高松市での企画展計画を進行中である。 阿波関係では、5月の四国大学書道文化学会で徳島市松茂町の「三木氏先世遺徳碑」の詳細を発表したが、その後この碑の建立者である藍商政治家の三木雲城が、実は徳島県内に多くの優良な石碑を揮毫している書家でもあることが判明した。その研究結果を10月の全国大学書道学会埼玉大会で発表し、研究誌にも掲載されることとなった。これと並行して、幕末の徳島藩銃卒で書家だった喜根井善種の肖像画賛と墓碑拓本の解読を進めた。その肖像画が幕末遣欧使節として洋行した原鵬雲の若描きであることがわかり、喜根井家と原家の歴史を詳細に解明し、新聞紙上で発表して両家から感謝された。さらに鳴門市大麻町の十輪寺の依頼で、石碑採拓と碑文・過去帳の解読を実施。研究冊子を作成して地域に配布し喜ばれた。これら3種の研究はすべて今まで全く研究されていない新資料に関わるものである。 淡路島関係では、淡路の歴史研究団体「益習の集い」の要請で、近世淡路の学者たちの思想や交流関係、石碑などの情報をパワーポイントや図でまとめ、11月に洲本市で講演して好評を得た。近世淡路の歴史研究は研究者が極端に少ない現状にある。 この間に、放送大学香川学習センター・高松市歴史資料館・徳島県立博物館でも研究発表の機会を得た。石碑拓本や儒学者の書道作品も少しずつ収集し、讃岐・阿波・淡路の3ヶ所に於ける研究が多くの人々との交流の中で順調に進んでおり、この地域の近世史や書道遺物への意識を高めることに成功しつつある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
石碑の採拓や骨董店からの購入によって、掛軸の書道資料も10点以上収集した。27年度における展示会や出版物の準備も進んでいる。2度の学会発表、各地での講演活動、論文・研究誌・新聞紙上での発表によって、地域住民の中にも地元の近世の書道作品や石碑、そして儒学者や地方史全般に関する関心を高めることに成功しつつある。今回の様々な研究は、従来ほとんど研究されていない資料に関するものなので、今までわからなかったことが新たに解明し、様々な機関に新情報を提供し喜ばれている。私に研究を依頼してくる方や研究に協力してくれる方が増え、地域ネットワークが形成されてきている。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度に研究の中心として予定しているのは、儒学者では讃岐の中山鼇山・藤澤東ガイ・神内喬木・菊池黄山、阿波の井上春洋・柴野碧海、淡路・阿波に於ける篠崎小竹の動きに関することである。この研究の一部は学会でも発表していく。また、これまでに調査が終了した事象をまとめて概説を書き、マップ等にまとめて教育・観光のための資料を作成していく。さらに、収集した作品を一堂に展示して一般に公開する機会を作っていく。
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備考 |
(1)は「幕末徳島の書家 喜根井善種とその後裔 -十六歳の原鵬雲が描いた肖像画から始まる物語-」の全文が掲載されている。(2)は個人ブログで、研究の事ばかりを記載しているわけではないが、研究活動の概要が理解できる。
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