この3年間に拓本を採って掛軸の形に表具した讃岐・阿淡の石碑は、20基以上に及ぶ。また、地域の近世儒学者や書家の真筆の掛軸作品を古美術店から購入して、本学図書館の蔵書資料としたものが15作品に及ぶ。毎年7月に四国大学交流プラザで実施している教員書道展の中で「地域書道資料コーナー」を開設し、これらを解説付きで展示した。また、同教員展では石碑文を六曲屏風に臨書した作品を毎年制作・展示し、その後にゆかりの寺院に奉納した。 これらの書蹟の解読後に、それに関する論文作成、書籍刊行に取り組み、学会発表・講演発表を実施した。この間の調査の様子や発表の様子を個人ブログに写真入りで掲載し、大学や書論研究会のHPにリンクしてさらに大勢の人たちに見て頂く工夫をした。時には新聞・雑誌の文化欄に掲載した。 これまで、讃岐・阿淡の石碑や書蹟が優秀なことは知られてはいたが、拓本技術、漢文や崩し字の解読技術に長けた研究者の不足から、思うように研究が進んでいなかった。そのため私の研究成果は多くの注目を集め、博物館関係者や書蹟所蔵者、子孫の皆さんから深く感謝されている。これらは歴史的資料というだけでなく、書道作品としての高い価値も持ち、今後も各地の重要な観光・教育の材料となって、地域活性化に貢献していくだろう。 なお、これらの研究成果は大学の担当授業でも扱い、地域の書蹟や石碑調査を卒業研究の題材にする者が増えた。現在は高校への出張授業や生涯学習の授業・講演の依頼が月1回程度あり、成果紹介をしている。日本史や書道史において、中央からの歴史観だけでなく、これまで知られていなかった地域の先人の活躍や発想に目を向ける人々が増え、身近な文化財の保護、書道文化への関心も増している。
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