唐時代前期において仏像の様式、形式上の急激な進展が認められたのは、則天武后期(690~705年)になってからであった。この時期に初めて写実的な肉体表現を持つ像が多数見られるようになる。そしてその後、中宗、睿宗時期(705~712年)には、さらに進んだ写実性を備えた像が出現した。則天武后と弥勒如来が、当時どの程度まで人々の間で同一視されていたかは不明である。しかし、則天武后の退位あるいは崩御で、仏像に当時の人々の理想とする人体形式を持たせる動きが加速した。そしてこれが、初唐期と盛唐期とを分ける大きな違いであり、インド美術を越えて仏像を人間化したことが、盛唐期の最大の特徴であると言える。
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