最終年度である2015年度には、代表者宇佐美は地図山水画史に関する研究を昨年度に引き続き行った。研究成果に関わる論文は、藤井淳編『古典解釈の東アジア的展開』(京都大学人文科学研究所(2016年度内に発行予定))に掲載する予定である。また宇佐美は2016年2月に台北故宮博物院を訪問し、書画ならびに典籍の調査をするとともに、台北故宮博物院図書文献處研究員の盧雪燕先生と今後の研究計画について検討した。 なお、盧雪燕先生については、これに先だって2016年1月に当研究費により、助手二名とともに京都大学にお招きし、京都大学文学研究科所蔵の清代中国地図、苗蛮図二種、江戸時代に日本で模写された明代中国地図及び日本絵図などを調査、さらに天理大学附属天理図書館にて、貴重書の調査閲覧を行い、特に日本の「水族図」の、描図法について調査を行った。これらの調査には、分担者木津・田中が同行し、調査及び議論を行った。そこでは、京都大学蔵の九辺図がチベットを含む貴重な資料であること、また、日本の江戸時代に、中国の地図を模写したものが印刷され、それが中国に渡り、情報が書き加えられた状態でまた日本にもどったものがあり、地図をめぐる日中の交流史をたどれる資料など、学術上興味深いものがあることなどについて盧教授の示教を得、さらに今後の研究計画について検討した。 また、当研究費を使用して、これまで進めてきた中国絵画データベース作成の一環として、『故宮書画図録』(32巻まで)のデータベース化作業を行い、当図録の内容の作者や画題等による検索を可能にするデータベースを作成した。
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