研究課題/領域番号 |
25370132
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
宮下 規久朗 神戸大学, その他の研究科, 教授 (30283849)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | カトリック改革 / バロック美術 / 17世紀 / ヴェネツィア |
研究実績の概要 |
本研究は、16世紀後半から17世紀にかけて高まったカトリック改革が、宗教や思想だけでなく、宗教改革がそうであったのと同じく、西洋の視覚芸術に及ぼしたことを前提とし、そのメカニズムを探ることを目的とする。そのため、16 世紀後半から17 世紀初頭にいたるヨーロッパ美術の変容に注目し、カトリック改革が、初期バロック美術だけでなく、バロック美術全体に作用したことを解明する。 今年度は、カトリック改革の影響が比較的少なかったとされていたヴェネツィアの17世紀美術に注目し、現地調査を含めて研究した。ヴェネツィアの17世紀は経済的な衰退やペストの流行によってめぼしい美術を生み出さず、サンタ・マリア・デラ・サルーテ聖堂に代表されるバルダッサーレ・ロンゲーナのバロック建築以外は美術の暗黒時代とされ、土地の流派が衰退したとされていた。しかし、そこにはイタリアの他の地域と連動するバロック美術の豊かな成果が見られ、その背景にカトリック改革の思想があったと思われる。具体的には、ヴェネツィアのサン・ニッコロ・ダ・トレンティーノ聖堂に設置されたベルナルド・ストロッツィとヨハン・リスの作品の成立過程を探り、それがヴェネツィア17世紀美術にいかなる影響を及ぼしたかについて考察した。それは世紀半ばにヴェネツィアに来たナポリの画家ルカ・ジョルダーノの様式がヴェネツィア画壇に決定的な影響を及ぼすことの土台を準備し、さらに18世紀の第二次ヴェネツィア派の隆盛に結びついたことをあきらかにすることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の調査先とはちがったが、研究の全体像に必要なヴェネツィアで調査することができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、本年度考察したヴェネツィア以外のイタリアの動向や、イタリア以外のヨーロッパの重要地域の調査を進めたい。
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