研究課題/領域番号 |
25370132
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
宮下 規久朗 神戸大学, 人文学研究科, 教授 (30283849)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | カトリック改革 / バロック / エクス・ヴォート / トーテンターフェル |
研究実績の概要 |
本研究は、カトリック改革が西洋美術に及ぼした影響を解明するため、16 世紀後半から17 世紀初頭にいたるイタリアを中心とする教会と美術、政治と美術との関係に注目し、作品検閲・装飾事業・収集活動といった、作品をめぐる権力と受容の問題を通して、カトリック改革が、マニエリスムとバロックとの過渡期であるこの時代の美術にどのように具体的に作用したのかを探るものである。16 世紀後半に日本にもたらされ、南蛮美術に継承されたが、教皇庁や教団の画像輸出政策と画像をめぐる宣教方針についても、記録・資料と布教用画像との両面から調査する。 本年度は、カトリック改革後にさかんになったエクス・ヴォートについて調査し、考察した。その中心地である南ドイツのアルトエッティングなどに調査に行き、関連資料を収集して論文にまとめつつある。エクス・ヴォートは、奉納物を神に捧げる太古からの風習だが、それが古代エジプトやギリシャを経てキリスト教に継承され、中世に教会の墓所や礼拝堂に掲げるエピタフと同化して15世紀にはフィレンツェを中心として奉納者の肖像を奉納する習慣となった。それがカトリック改革後には庶民の巡礼の流行とともに奇跡譚を描いた絵額が主流となり、今日にいたっている。欧米においてもその研究はそれほど多くなく、1972年のクリス=レッテンベックによる基礎的研究を除いて進んでいないが、その資料をできるだけ収集した。アルトエッティングでも、16世紀に始まったエクス・ヴォート奉納が、イエズス会による巡礼奨励と聖地宣伝によって17世紀から18世紀に全盛期を迎えている。エクス・ヴォートは神への報謝が主流であったが、その中には亡くなった者の冥福を祈願するTotentafelが多く見られることに注目し、日本の供養絵馬と比較して考察した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
おおむね順調に進展しているが、昨年までの研究とのつながりが弱くなっている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は本年度の調査研究を深めて論文にまとめ、全体を統合して成果を発表したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
注文した図書が届かないなど、予定通りに行かなくなった。
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次年度使用額の使用計画 |
図書の購入に当てたい。
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