本研究では、経典に由来する図像が寺社縁起絵や仏教説話画において共有され、中世を通じて継承された過程を明らかにした。 具体例として、『摩訶止観』に基づく図像である「九相図」が、『往生要集』や九相詩・九想の和歌や説話と結びつき、多義的に解釈されていた実態を明らかにした。さらに、『法華経』や『正法念処経』に基づく病の図像が、「病草紙」や「粉河寺縁起絵巻」において、罪深さの象徴として機能していた点に着眼し、これらの絵巻に関して因果応報観を読み込む新たな解釈を提示した。 成果の一部は、『九相図をよむ』(KADOKAWA、2015年)、『病草紙』(中央公論美術出版、2017年)などの出版物として公刊している。
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