研究課題/領域番号 |
25370140
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
内田 啓一 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (30327952)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 宋時代版画 / 西大寺流 / 文観房弘真 / 信空 |
研究実績の概要 |
「研究目的」 西大寺流に関係する美術作例の実査を中心にその制作背景を考察することが主目的である。 「実査報告」 叡尊在世時の作例はほとんど伝来するものはないが、その後の作例で叡尊の影響を踏襲するものも多く、特に相関関係のなかで調査を進めた。2014年度の実査は金沢文庫聖教、フランス・ギメ美術館所蔵仏画、イギリス・ブリティシュミュージアム所蔵仏画、奈良・長福寺内陣壁画、早稲田大学図書館所蔵文観阿舎利絵巻と狐草紙である。 ギメ美術館では信空和尚画像が注目され、伝来等は不明だが、今後精査する必要がある。まだ、阿弥陀三尊画像は前年度に調査した和歌山・遍昭寺蔵木造弘法大師像納入品の宋版と思われる阿弥陀三尊図と近似する図様であり、版画と画像の関係から注目される。次いでブリティシュミュージアム所蔵作例では慈恩大師画像が南都の流れをくむものとして今後精査すべき作例であった。また、登録名は赤童子とされる画像が文観房弘真撰述とされる『御遺告大事』に基づくものであることを見いだし、西大寺所蔵の龍王曼荼羅と同図像であり、今後、類似作例が見いだされるものと思われ注目される。次いで、奈良・長福寺内陣の柱絵については奈良教育大学による彩色解析のデータに基づきながら復元的な考察を進めている。最後に、早稲田大学図書館所蔵文観阿舎利絵巻と狐草紙は比較検討することで、ほとんど同じ図様の絵巻であることがわかり、文観房弘真に対する構成のイメージから制作された作例と判じられる。この点についてはすでに研究成果のひとつとして、早稲田大学図書館紀要に投稿した。 以上、西大寺流に基づきながら派生した作例についての検討を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度調査を引き継ぎながら順当に調査を進め、判明した点、また、関連すると考えられる作例を見いだせた。西大寺流における密教と事相にまつわる絵画、宋時代作例からの影響(特に版画作例)との関係などについて、焦点が定まりつつある。 実査は赤外線撮影や顕微鏡モードなどを用いて多角的なデータ収集にも努めており、首尾良く達成しているものと判じられる。
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今後の研究の推進方策 |
宋代版画については、現在論考を執筆中であり、西大寺流における宋代版画の需要と関連づけてみたい。赤童子と『御遺告大事』については今後鋭意類似作例を見いだす必要があり、西大寺所蔵の龍王曼荼羅を調査する。すでに寺院側の内諾を得ている。また、西大寺伝来の祖師画像についても調査之予定。在外作例としては、ボストン美術館、メトロポリタン美術館の西大寺関係の作例を調査予定。 また、史料検討を進め、今年度は本研究課題のまとめとしたい。
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