研究課題/領域番号 |
25370141
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 佛教大学 |
研究代表者 |
大西 磨希子 佛教大学, 仏教学部, 准教授 (00413930)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 当麻曼荼羅 / 諸州官寺制 / 遣唐使 / 九品来迎図 / 来迎 / 往生 |
研究概要 |
本研究の目的は、当麻寺に伝来する綴織当麻曼荼羅図を対象に、敦煌壁画など関連作例との比較をとおして、浄土宗各派における重要な論点とされている下縁の九品来迎相の復元的考察や、未開拓の研究分野である序文図(未生怨説話図)の歴史的位置づけを試みるところにある。 平成25年度の研究では、綴織当麻曼荼羅図の制作背景と伝来経緯、および九品来迎図の復元的考察の前提となる唐代九品来迎図の基礎的考察を行い、各成果を論文として発表した。さらに、綴織当麻曼荼羅図と同じく、奈良時代に唐から将来されたと目される工芸的仏画作品である奈良国立博物館所蔵刺繍釈迦説法図について、その主題と伝来時期を検討し、佛教史学会において口頭発表を行った。また関連研究として、聖語蔵に蔵される『宝雨経』について則天文字の使用状況を調査し、書写時期や伝来時期などを明らかにし、その成果を論文として発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度は、綴織当麻曼荼羅図の九品来迎図を復元的に考察するための前提となる中国唐代の作例について、現存する5作例すべてを対象に実地調査を行い、その成果を論文にまとめることができた。ただ、莫高窟での調査環境が以前とは一変し、一窟あたりの調査時間は30分以内、しかもスケッチ禁止という厳しい限定のもとで行わざるを得なかったことは、研究推進上の大きな足かせとなった。今後も同様の規程が適用されるということであれば、莫高窟での調査に多くを依存することは難しいため、序文図については既刊の図版また在外の蔵経洞発現遺物を中心とすることが見込まれる。 当麻曼荼羅の九品来迎図の復元的考察については、転写本での表現の分類・整理に着手し、莫高窟の調査によって得られた知見とあわせて、当初の図様に関する見通しを得ることができた。また、綴織当麻曼荼羅図に関連が深く、同様の制作背景また将来状況が想定される勧修寺繍仏について研究成果を発表することができたこと、それに関連して聖語蔵の『宝雨経』諸巻について論文にまとめることができたことも、本年度に達成しえた成果である。 以上から、敦煌莫高窟での実地調査には予想外の困難が伴ったが、研究計画に沿って概ね順調に遂行することができていると考える。
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今後の研究の推進方策 |
綴織当麻曼荼羅図の九品来迎図の復元的考察については、平成25年度までに得られた知見をもとに、転写本での表現の分類・整理を継続し、平成26年度中に口頭発表し、論文にまとめる予定である。同様に、勧修寺繍仏に関する研究成果についても、平成25年度の口頭発表をふまえ、平成26年度中に論文として発表する予定である。また、聖語蔵の『宝雨経』は光明皇后の御願になる天平十二年五月一日の奥書をもつ、いわゆる五月一日経の一貫として書写されたものであるが、本年度の調査により、五月一日経として書写された『宝雨経』の巻九のみ、東京国立博物館に所蔵されていることが分かった。この東博所蔵の巻九については、図版が公刊されておらず、同館の写真資料も巻首と巻尾のみの、ごく限られた部分の撮影にとどまっており、いまだ全容は明らかでない。そこで、この巻九についても平成26年度中に調査を行い、研究成果を発表する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度の執行の結果、端数として754円の残額が生じることとなってしまった。 少額であることから、次年度の交付額とあわせ使用する予定である。
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