本課題では、西洋キリスト文化においてイメージが時代を超えて宿す記憶とアナクロニスムの問題を三つの事例において考察した。①アルプス周辺に点在する「主日のキリスト」に着目し、既存の多様な図像伝統がいかに混淆しつつ周縁的で逸脱的な図像を生成したのか、さらにこの像が新たな聖女を生み出し、他の聖人と混淆していく経緯を後づけ、その転生の論理を分析した。②ルネサンスに新たに流行したキリストの側面観肖像が、初期キリスト教時代の肖像や偽文書と結び付けられ、「古代性」「真正性」を事後的に付与される経緯を解明した。③聖像行列や聖像と聖遺物の演出のパラダイムを模倣することにより神性空間が増殖される現象を考察した。
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