平成28年度は科学研究費助成金の最終年度であるために3回にわたり米国・英国に渡航し、精力的に近世京焼を調査した。第1回は平成26年6月8日~18日(11日間)英国に渡航。セインズベリー日本芸術研究所で招待講演を行い、13日から4日間、メイドストーン博物館で研究協力者サマンサ・ハリス、福永愛とともに、箱書110点、作品40点の調査を実施した。本博物館ではマーシャム卿が日本で収集を行った1900年頃の箱書が保管されており、これは貴重な資料である。 第2回は平成28年8月21日~9月1日(12日間)に米国に渡航。22日から4日間、ボストン美術館で研究協力者のアン・ニシムラ、ルイズ・コート、下村奈穂子の補助を得、180点の、17世紀~19世紀の粟田焼・清水焼を中心にした京焼を調査した。27日にはピーボティ美術館で三代清水六兵衛時代の六兵衛窯の様相を描いた絵巻を閲覧した 第3回は平成29年2月20日~3月2日(11日間)の英国調査で、21日から3日間で研究協力者ハリスと福永に岸田陽子を加えメイドストーン博物館の箱書50点、陶磁器50点の調査を実施した。この調査では17世紀の高取焼・仁清茶入、難波焼猪口を発見、続いて24日から3日間で大英博物館で福永・岸田・矢野明子を研究協力者に作品120点を調査し、仁清の色絵香合を発見した。米国・英国ともに日本では未紹介の優れた作品を発見し大きな成果があがった。 海外調査のみならず、本年度は米国フリーア美術館出版の“Chigusa and Art of Tea“の日本語版『「千種」物語―二つの海を渡った唐物茶壺』(思文閣出版)の編著者をつとめ、英国においてChanging Concepts of the Value of ‘Things’ in Japan: From Gusoku to dogu”の題名するなど、海外と関わりの深い業績を上げた。
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