本研究は、これまで「唐物」(中国製)を中心に行われてきた彫漆研究を根本から見直し、長く研究の埒外に置かれてきた「和物」(日本製)彫漆の実態を解明しようとするものである。 とくに資料の充実している江戸時代の「和物」彫漆、すなわち江戸幕府御抱職人の堆朱楊成、高松松平家御抱職人の玉楮象谷、紀州徳川家の御庭塗=偕楽園塗などの彫漆ついて調査を行い、漆調合などの材料、彫技などの技法や文様等の特徴を把握し、唐物との相違点を掴むことに努めた。これにより、唐物彫漆のなかに埋もれている和物彫漆を求索するための有用な手がかりが得られると考える。
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