(1)平成27年9月、東京国立博物館にて狩野常信筆「鳥写生図」8巻の調査を行い、撮影・注記の判読を完了した。また平成27年4月、国文学研究資料館にて稲葉家文書『永代日記』を閲覧し、狩野探幽と幕府大老・稲葉正則の交友に関する記事を調査した。その他、根津美術館などで江戸時代の諸派の作品を実見した。(2)本年度は常信筆「鳥写生図」の調査によって、江戸初期に鳥類への関心がきわめて高かったことが被写体の提供者から明らかになった。また絵師が優れた写生を行うとともに、鳥類の特徴を豊かな語彙によって注記していることに着目し、それら注記を同時代の画論にみられる彩色法や色材と照合することで、絵師の精緻な記述力と描写力を確認した。さらに、稲葉家文書『永代日記』の記事から、江戸時代にもっとも早く写生図をてがけた狩野探幽が、オランダ文化を摂取しえた背景をみいだした。(3)常信筆「鳥写生図」の注記翻刻などの目録は、国立情報学研究所の Researchmap〔資料公開〕にて公開した。また、探幽と常信の写生図に関する25年度からの研究成果については、東京国立博物館において特集展示「江戸の写生図―可憐なる花卉図の源泉」を開催し、ひろく一般に公開し、リーフレットの無料配布・研究論文の刊行・月例講演会・ギャラリートークを展開した。
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