研究課題
テッラ・シギラタとは、古代ローマ期の工芸美術において重要な位置を占める土器であると同時に、ローマ時代遺跡発掘においてはその層位の年代や交易の状況を示す考古学資料としても重視されている。しかしながら、斯くに重要なローマ土器の知名度はわが国において著しく低く、わが国の研究者が地中海地域で行う諸分野の研究においてテッラ・シギラタの史料価値が有効活用されているとは言い難い状況にある。そこで本研究では、紀元前2世紀から後7世紀に渡り地中海各地で生産され流通したテッラ・シギラタ群について諸外国の研究史を精査し、その系譜と各生産地の消長を丹念に体系付けたうえで、わが国の古代土器・陶芸研究で使用されている用語も参考にしつつ、その用語の刷新と統一も試みた。諸外国の研究成果を精査し国内の学会で成果を発表する一方で、最終年度には本場でも研究の進んでいないアフリカ属州内陸部(チュニジアとアルジェリアの国境地域)産テッラ・シギラタ(フランス共和国ギャップ市在県立博物館所蔵コレクション)を研究し、使用されている粘土の地質学的分析と蛍光X線分析との比較を織り込んだ論文をフランスの雑誌で発表した。なお、本研究は国際共同研究において継続することを認められた。そこでは本研究の成果に視覚情報を充実させることになる。インターネット上で公開される本研究のデータベースは、胎土サンプルとその地質学的分析ならびに土器写真を盛り込み、実際に土器を目にする機会の少ないわが国の研究者が各自の研究のために共通言語として利用できる「ツール」となることを目的とする。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件)
Antiquites africaines
巻: 52 ページ: 157-184