本研究は、鎌倉地方に関連する中世絵画について作品調査、文献資料の収集・蓄積を行うことにより、鎌倉から南北朝期の中世東国における絵画制作の実態の把握、流通及びそれを可能にしたネットワークを明らかにすることを目的とするものである。 本年度は主に次の①~⑥のとおり調査・研究を行いその成果を公開した。①神奈川県立金沢文庫が保管する称名寺所蔵絵画の作品調査を行い、基礎データを収集した。②鎌倉時代の金沢北条氏の書状など金沢文庫文書のうち、唐物関係史料を中心として美術作品に関する文献データを収集した。③宋、元時代の舶載仏画および日本製の「宋風」作品の調査・研究。④臨済宗円覚寺派寺院(神奈川、新潟で実施)の文化財悉皆調査を行った。⑤五百羅漢図に関する調査、研究。梅沢恵「五百羅漢図」(解説)『國華』1437号(特輯狩野一信)、2015年7月。梅沢恵「鎌倉・円覚寺の五百羅漢図について」(五百羅漢図研究会にて口頭報告)於:九州大学、2016年3月。⑥「一遍聖絵」を中心とした時衆関係作品、文献に関する調査・研究を行い、成果の一部を特別展「国宝一遍聖絵」の展示、図録等で公開した。梅沢恵「姿を顕した熊野権現」『国宝一遍聖絵』遊行寺宝物館、2015年10月。梅沢恵「一遍聖絵における景観表現の多様性」『国宝一遍聖絵 別冊金沢文庫篇』神奈川県立金沢文庫、2015年11月。梅沢恵「図像的解釈の試み」(国宝一遍聖絵展記念シンポジウム「国宝一遍聖絵の全貌」にて口頭発表)於:東京国立博物館、2015年11月15日。
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