本研究は、鎌倉地方に関連する中世絵画について絵画制作の実態の把握、流通及びそれを可能にしたネットワークを明らかにすることを目的とするものである。作品調査、文献資料を収集、蓄積することにより中世東国における絵画制作の実態について考察した。特に、室町時代の禅宗の主流となった夢窓派の拠点として創建された円覚寺黄梅院に注目した。また、夢窓の高弟が東国に創建した寺院を追跡することで、黄梅院の初代院主となった方外宏遠が創建した寺院の旧本尊や頂相彫刻を再発見し、夢窓派のネットワークを通じて京都から頂相などの絵画が鎌倉に移動した具体的な事例を明らかにすることができた。
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