1、「映画と身体」と題し、映画と身体と速度をめぐる考察をテーマとする研究集会(2015年10月22日、北海道大学)を開催した。「女性―国家/民族苦難の隠喩」(黄献文、中国武漢大学)、「女たちの声と男たちの身体―『雨月物語』再考」(川崎公平、北海道大学)、「身体、空間、物語―ジョン・カサヴェテスの『フェイシズ』の場合(応雄、北海道大学)と、計三つの研究報告が発表されたとともに、同テーマをめぐって各研究者および研究会参加者のあいだで意見交換が行なわれた。本研究会の実施を通して、速度と身体の史的・理論的なかかわりについて確認し、議論を深めることができた。 2、「ゴダール、アクション、未来」と題する研究論文を完成させ、表象論専門研究誌に掲載した。本研究論文は、ゴダールの映画を時間の第三の総合においてこそ起こるアクションとして考察し、ゴダール映画における速さと遅さの相貌について独自の理論的究明を試みた。 3、オーソン・ウェルズ作中人物論を「真/偽」、力能の生成変化の問題と関連付けつつ試みた。とりわけドゥルーズが『シネマ2』第6章で展開した論考を参照しながら、「真/偽」の転換速度や、作中人物像と第三の時間(未来)との関係について詳細に考察し、口頭発表および研究論文によって研究成果を公開した。(本研究成果は、中国武漢大学での講演、および中国の映画研究専門誌『当代電影』での論文掲載によって公開された。このことによって研究成果の海外への発信を一定程度実現できた。) 4、まとまったかたちでの映画速度論の研究成果の公開に向けて、本研究の全体的なまとめを推進した。
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