研究課題/領域番号 |
25370156
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
金 鉉哲 東北大学, 高度教養教育・学生支援機構, 講師 (80361210)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 韓国映画 / 大衆の欲望 / 世界観 / 問題認識 / 解決方式 / 主人公のキャラクター |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、日韓のテレビドラマと映画における大衆の欲望の特徴を明らかにすることである。平成26年度には、リメイクされた韓国映画について注目し、具体的に作品の分析を行った。特に『オールド・ボーイ』、『火車』、『容疑者X』を中心に、日本原作のリメイク傾向について調べた。 『オールド・ボーイ(Old Boy)』(2003年)は、漫画『ルーズ戦記 オールド・ボーイ』(土屋ガロン原作、嶺岸信明 作画)を原作とした映画である。『オールド・ボーイ』は世界で韓国映画の名を馳せた代表的な作品である。この映画は、原作の「ユニークな世界観」をそのまま受容し、原作にはない「復讐のスピーディーな展開」、「魅力的なキャラクター」を新しく作り上げた。『火車』(2012年)は推理小説『火車』(宮部みゆき 作)を原作とした映画である。『オールド・ボーイ』以後、多くの日本作品がリメイクされたが、そのほとんどは大衆的な人気を得ることはできなかった。この中で作品としても、興行収入面でも成功した独特な作品が『火車』である。この映画も原作の「ユニークな世界観」をそのまま受容し、原作にはない「愛に執着する人物」、「同情と憐憫の結末」を新しく作り上げた。『容疑者X』(2012年)は推理小説『容疑者Xの献身』(東野圭吾 作)と映画『容疑者Xの献身』(2008年)を原作とした映画である。この映画も原作の「ユニークな世界観」をそのまま受容し、原作にはない「メロドラマ方式の展開」、「悲劇的な主人公」を新しく作り上げた。 結局、大衆的な関心を集めたリメイク映画はミステリーとサスペンスのジャンルに集中している。原作の「世界観」をそのまま受け入れた理由は、ユニークな人物関係とストーリー展開のためであり、原作と全く違うスタイルで「問題認識と解決方式」、「主人公のキャラクター」を作り上げた理由は、韓国大衆の欲望に従ったためであることが明らかになった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成26年度の目標は、日本原作をリメイクした韓国映画について注目し、具体的に映画作品を分析することだった。日本と韓国で話題になった映画を中心にその人気の傾向性について調べた。特に、客観的な統計調査資料、映画専門雑誌、インターネットの反応などを総合的に収集し、日韓の人気作品の共通点と相違点を調べた。この過程で最も困難であったのは、映画の客観的なデータの収集であった。信頼できるデータは興行収入程度で、他の雑誌やインターネットの資料は客観的なデータとしての問題が色々とあった。そのため、数多く資料を集めたが、データとしての信頼性を確認する作業が必要だった。そして、平成26年度には足の手術とリハビリという個人的事情により映画資料の収集や分析作業がやや遅れたが、平成27年度には資料収集と分析を早急に終えて、次のドラマと映画の比較作業を進める予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
平成25年度と平成26年度に収集した資料とデータを基にし、平成27年度には日本と韓国の大衆が持っている欲望と幻想の特徴を調べる予定である。特に、視聴率が高いドラマ作品を中心に日韓の大衆が何を求めているのかについて研究する。日韓のドラマには大衆の無意識的な欲望がよく表れている。韓国の人気ドラマは日本と違って極端的な葛藤、不倫が一般的であり、刺激的なストーリー展開によって視聴率が高くなる傾向がある。このように非現実的な内容に熱狂する韓国大衆の抑圧された欲望の特徴について調べる。日韓においてリメイク作業は、テレビドラマでも映画でも一般的な現象として定着しつつある。しかし、リメイクされた作品の中には原作の人気を越えた作品もあるし、全く人気がない作品もある。この理由について、日韓の大衆が好きな人物像、ストーリー展開、典型的な葛藤構造などの「ステレオタイプ(stereotype)」が存在するのかについてなどの点からも注目する予定である。
|