これまで行ってきた欧州での実見調査や収集した資料を整理し、考察を行い、実験制作と併せ、研究のまとめを行った。欧州の木彫表現と日本の木彫表現との比較から生まれる新たな木彫表現について、その研究成果の発表として制作研究の成果を公開した。展覧会「大原央聡 河西栄二 木彫展」を筑波大学大学会館総合交流会館において開催し、研究代表者の大原央聡と研究分担者の河西栄二の木彫作品を展示し、制作者の立場から実制作を通した考察について、欧州と日本の木彫表現を拠り所にさまざまな造形的な試みを提示することができた。具体的には大原央聡は欧州の木彫制作に見られる造形的特徴と日本古来の造形観の融合を目指した。作品《顔を広げようとする人》(ケヤキ 彩色 H.183×W.98×D.52 (cm) 第90回国展(国画会主催)国立新美術館 2016年)では日本古来の木彫制作法である木取りや鋸で大きく挽き落としてできる面の意識を作品に活かしていくことと、同時に西洋における求心的なフォルムの追求方法、鑢等を用いた形態の詰めを両立させることにより新たな木彫表現の追求を行った。木取りによる大きな面の意識により作品全体の強い構築性を求め、最終的な形体の詰めについて鑢を使用した連続的な手法と刀による段階的な面の処理を効果的に混在させることを試みた。河西栄二は研究分担者として、欧州の木彫表現の寄木、内刳りについて、自身の制作研究において研究を行った。欧州で行われていた、形式、様式によらない自由で機能的な内刳りの方法、材の寄せ方は実際に制作を進める上で参考になるばかりではなく、造形観にも影響を与えるものであった。実際に自己の制作では様々な樹種を選択し、寄木や内繰りの手法を工夫することで、丸太の形態や強度の限界を超えた表現の可能性を示した。 作品展示と併せて、同会場にてポスター展示を行い、これまでの研究成果について発表を行った。
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