研究課題/領域番号 |
25370158
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
清水 知子 筑波大学, 人文社会系, 講師 (00334847)
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研究分担者 |
李 香鎮 立教大学, 異文化コミュニケーション学部, 教授 (80535964)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ディアスポラ / 移民 / 映画 / 政治 / 人種主義 / 記憶 / ジェンダー / ポピュラーメディア |
研究概要 |
本研究はグローバル化によって加速する多文化社会において「公共性」がどのように再編されているのか、その可能性と問題点についてトランスナショナルな視点から探究するものである。とりわけ、「人種」とそのイメージの形成について、マスメディアとインディペンデントメディアとのギャップを分析しながら、メディアの制作と受容のあり方についてフィールド・インタビューを通じて考察するものである。平成25年度は、以下の点を主要な目的として調査を行い、その成果は、国内および海外(シンガポール、韓国、エジンバラ)の学会で報告し、またそれぞれ単著、共著、論文として発表した。今後さらに解明すべき課題については平成26年度の調査研究を通じて明らかにしていく予定である。 (1)人種、移動、資本主義に関する最新の理論、文献を整理し、その可能性と問題点を明らかにした。 (2)ディアスポラ映画として在日映画の歴史的起源と代表的作品を分析した。在日映画を中心にアジアのトランスナショナル文化の変化と流れを、とりわけデジタル・メディアの拡張という観点から、制作者によるインタビュー調査を行い考察を進めた。 (3)デジタル・メディアの普及と拡散について、非公式な流入によるトランスナショナルなアジアとアメリカの大衆文化の流れが日本、韓国、北朝鮮社会(とくに金正恩時代の北朝鮮のメディア政策および北朝鮮社会の韓流収容の実態)にいかなる影響を及ぼしているのかを調査し考察した。 (4)嫌韓流論からヘイト・スピーチへ、新たな局面に迎える日本社会におけるマイノリティー文化として韓流の最新の動向を調査し考察した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度は新たに出版された公共性、人種、メディアに関する理論的な文献を読みこなし、具体的にいくつか主要な映像テクストを分析し、同時に以下の公開シンポジウム、学会発表においてその成果を発表した。 (1)国内では筑波大学で10月にアウトノミアと自由ラジオに関するインディペンデント映画の上映会とトークを開催、12月に同じく筑波大学でアフリカのウガンダにおける反同性愛法の成立に関する映画の上映会とトークを開催、また同じく12月には立教大学で映画監督を招いてアジアにおけるトランスナショナル映画のシンポジウムを開催して関連分野の研究者と学者とともに活発な意見交換をすることができた。これらの成果は最終年度にグローバル化と移民、メディアに関する理論的な考察とあわせて論集としてまとめる予定である。 (2)国外では清水と李が7月にシンガポールで現代のメディアと文化政策について学会発表を行った。また同じく7月に李がオーストリアで在日映画や日本における韓流現象とその行方についてジェンダー/セクシュアリティ的観点から考察した中間研究結果を、8月には北韓大学院で北朝鮮の大衆文化研究発表会に参加、10月と11月には韓国のソウル、大邱(テグ)等で開催された国際大会で在日映画と韓流に関する論考を3回にわたって発表した。 今後は今年度試みたインタビュー調査、映像分析を踏まえた議論、意見交換をもとにそこで生じた疑問点をさらなる課題として加えたうえで、来年度の研究を進めていきたい。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は今年度の研究成果をふまえたうえで、以下のテーマを重点的に発展させていく予定である。 (1)現代日本における人種主義とその構造、イメージの生成についての考察。 (2)ディズニーのアジアにおける歴史的な受容と変容について。 (3)ハリウッド映画に現れる北朝鮮、および韓国、日本のイメージ分析。 (4)北朝鮮における大衆文化研究について。 上記について、一次資料にもとづく文献調査とフィールド調査を行うとともに、文化産業からクリエイティヴ産業へと移行する過程において、メディアと情動の関係がどのように変容していったのかをテクノロジーと表現の変容という観点から考察する。フィールド調査については、とくに近年のデジタル・メディアの拡張によって変化するトランスナショナルなアジアのメディア文化の諸相について行う予定である。また2013年5月のカンヌ国際映画祭、10月の釜山映画祭、11月のソウル青少年映画祭、2014年2月のベルリン映画祭へ参加し、インタビュー調査をもとにアジアの作品の最近の動向を調査し主要資料を収集する。北朝鮮の大衆文化については、李がソウルに所在している北韓大学院へ訪問し、北朝鮮の主要新聞記事及び放送資料の索引作業と関連資料を調査する。また5月~6月にかけて北朝鮮大学院のイウヨン教授を招待して北朝鮮映画や大衆映画研究会やシンポジウムを通じて討論を開催し知見を深める予定である。以上の研究調査を進める一方で、最終年度に向けて研究成果を発表できるよう論文集の企画を進める予定である。
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