本研究は、19世紀後期に合成アリザリン顔料が開発されてからはほとんど絵具としては顧みられなくなった天然有機赤色レーキ顔料の実際の絵画への適用を目指したものである。 まず、現在でも充分に生産され流通しているコチニールを原材料とするカーマインレーキ製造にしぼって、過去の文献を調査し、19世紀の文献の処方に従って実験を行った。 次に、レーキ顔料の欠点は耐光性のなさと言われていることから、作成した顔料の耐光実験を行った。退色は見られたが、環境に留意すれば実用は可能と思われた。さらに、文献には現れてない作業工程の改善の必要性が判明し、これに取り組んだ結果、顔料採集量の増加と色調の向上に成果が得られた。
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