研究課題/領域番号 |
25370164
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研究機関 | 東京藝術大学 |
研究代表者 |
筒井 武文 東京藝術大学, その他の研究科, 教授 (70420297)
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研究分担者 |
長嶌 寛幸 東京藝術大学, その他の研究科, 教授 (10621790)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 映画 / デジタル編集 / フィルム編集 / デジタルシネマ |
研究実績の概要 |
25年度に撮影された4Kと35mm映像をポストプロダクションの協力してもらい4Kスクリーンに上映し、その印象の違いについて学生の意見を求めた。これは、4Kと35mm映像の画質の比較でなく従来のフィルム撮影時に必要であったニューラッシュ上映時に編集者が重点をおいた映像の印象がデジタルとフィルムでは、どのような違いがあるかを調査する目的でおこなった。その結果、4K映像と35mmプリント映像の画質的違いはある程度認められるものの、編集者が受ける映像の印象については、それほど大きな違いは認められなかった。 フィルム編集とデジタル編集の比較から、最も大きな編集作業の違いは、「デジタル編集は少人数で編集が行える。」、「デジタル編集は編集のやり直しが容易である。」「様々なバリエーションが制作可能である。」などの点が指摘される一方で、フィル編集はやり直しができない事から、「実際にカットするまでに素材を見る回数が増える」といった特徴があることが指摘されている。新しい編集体制の提案の為、25年度の編集者インタビューと4K映像と35mmプリント印象の比較、編集工程などを比べた結果、フィルムとデジタルの撮影素材を編集素材として扱うまでの時間的の違いと、デジタル編集の編集処理の高速化着目しデジタル編集作業のスピードという特徴生かした撮影と編集が互いにフィードバックしながら編集と撮影を進めていく新しい編集体制を提案した。 この提案した編集体制の検証として、現役の映画編集者と撮影監督を招聘して、新しい編集体制のもと4グループによる4本の短編制作を実地した。それにより、編集と撮影が反復(イテレーション)するための技術的検証と、反復が映画制作にももたらす影響と効果その映画制作における有効性を現役の映像プロフェッショナルとともに検証した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度の重要な計画目標であった新しい編集体制の提案は、“撮影と編集の一体化”というフィルム制作では困難であったデジタル技術に特化した新しい映画編集体制を提案した。 この撮影と編集の一体化は、デジタル技術を利用することで初めて実現的に可能となる。この撮影と編集の一体化の結果として、“スタッフの対話”が活発に行われるようになり、その“スタッフの対話”の効果が映画の映像表現と創造性に何からの影響を及ぼすことが実践制作により確認できた。 従来の編集体制とは異なる、デジタル技術を利用した新しい編集体制を26年度で提案し、26年度に短編映画の実制作を行い考察検証できたことは本研究にとって重要な成果である。 当初の計画では、26年度にフィルム編集とデジタル編集の同一素材を使用した編集の比較検討から新しい編集体制を提案する計画であった。しかし、初年度(25年度)のリサーチ結果と4Kと35mm映像の撮影とラッシュ上映の比較結果を考察した結果から、当初の予定であった実際の編集方法ではなく編集工程を撮影から録音までと捉え直してデジタル編集とフィルム編集の特性の相違点を熟考の結果として新しい編集体制を導き出している。 しかし、最終年度(27年度)に行う新しい編集体制の提案と提案した映画制作がどのような効果を映画制作に与えるのかなどについての報告には、26年度の新しい編集体制の提案が当初の計画通り行われ、その技術的検証と実際の制作効果が検証できたことは重要な達成である。その点からも現在までの達成度が“おおむね順調に進展している”が妥当な評価であると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
提案された新しい編集体制がもたらす映画制作に対する効果と方法論の報告は、編集シンポジウム開催し研究結果を報告する。成果物は、シンポジウムの内容を報告書として作成し、映画教育機関に広く配布する。また、東京藝術大学大学院映像研究科のホームページにて研究成果を掲載し広く一般に公開する。 初年度のリサーチと検証結果からフィルムとデジタル編集による実践制作による比較を行わなかった。 26年度行われた新しい編集体制による短編制作は、機材的理由からHD画質で撮影され技術的ワークフローが検証されている。しかし、プロフェッショナルから、今後の画質は2K・HDレベルではなく、4Kレベルでの映像制作が主流になることが指摘されている。その意見を反映し26年度提案された新しい編集体制が4Kでの運用が可能かどうか技術的検証を行う。 また、現在のデジタル制作現場では、新しく誕生した役割Digital Imaging Technician(DIT)の重要性が指摘されている。DITの役割は撮影と編集を繋ぐ重要な役割であり、編集ワークフローだけでなく編集の色彩情報に大きな影響を与えている。編集体制とDITの関わり方、編集と色彩情報について考察する必要がある。 最新デジタル技術を用いることによる提案編集体制の技術的検証、デジタル制作に重要な役割を果たすDITと新しい編集体制との関係性の考察、編集のための色彩情報の関係の検証を行う必要がある。それらの検証結果と映像のプロフェッショナルの意見を参考にしながら提案編集体制の改良を行い映像作品の制作を行う。また、フィルム編集経験のない学生にフィルム編集とデジタル編集の両方を体験させ、技術的理由でなく根本的にデジタル編集とフィルム編集の何が異なるのかも検証し報告する。
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次年度使用額が生じた理由 |
これまでの研究から、フィルムとデジタルの編集方法の違いでなく、デジタル技術を利用した新しい編集体制のほうがより現実てきな編集体制が可能であると判断した。 デジタル技術に利用に伴い、プロフェッショナルの意見から、4Kでの編集体制が可能かどうか技術的検証の要望が出てきている。新しい職種であるDITとワークフローの考察についても検証が必要となる。
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次年度使用額の使用計画 |
4Kなどの高画質による編集体制の検証、35mmプリントによるフィルム編集の実地をし、DITによる、色彩情報と編集作業の関係性の検証を行う。プロフェッショナルの意見を取り入れながら、新しい編集体制による映像作品の制作を行う。 これらの結果を発表する場として、シンポジウムを開催し報告書を作成する。
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