本研究はアメリカの雑誌メディアを主たる対象として、近代におけるファッションと女性性との関係構築の歴史を考察するものである。本年度は最終年度にあたり、先の二年間で残された課題、すなわち雑誌付録の実見調査をロードアイランド大学コマーシャル・パターン・アーカイヴで実施した。そのうえで、研究期間全体において遂行した調査の整理と考察を行った。 本年度の研究成果の内容は、次の通りである。19世紀後半から20世紀前半のアメリカの女性誌・ファッション雑誌を、(1)家庭裁縫 (2)パターン産業 (3)パリ・ファッションという三つの観点から分析し、次の点を明らかにした。すなわち、(1)衣服制作のためのパターンは、既製服産業やオートクチュール産業に先駆け家庭内に流入していたこと、(2)女性たちはパターン消費と衣服制作を通じて「モデルを真似て流行に倣う」という振る舞いを獲得したこと、(3)パターンによる衣服制作が高度に発達したアメリカにパリのオートクチュールが取り入れられたこと、である。そしてこれら雑誌のイメージと言説を通じて、近代において女性たちがファッションの主たる享受者として構築されていくプロセスを明らかとした。 以上の研究成果をもとに三つの研究発表を行い、うち一つについては学術論文(「パターンによる流行受容ー初期『ハーパース・バザー』の重要性」)として印刷中、一つは投稿準備を行った。また、三年間の研究成果を研究成果報告書としてまとめた。
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