研究概要 |
本年度はシューベルトの4手連弾作品における6種のペダルの使用法を中心に研究をおこなった。その結果以下の4点が明らかとなった。1.シューベルトの4手連弾作品の成立は、現在のピアノからは失われてしまった4種類のペダル機構(モデラート、ダブルモデラート、ファゴット、トルコ)の機能と密接な関連性がある。特に連弾作品においてのみ可能となる2人の奏者の4本の足を駆使したペダル使用法によって初めて多様な演奏が可能となる事が明らかとなった。2.トルコペダルの使用法については以下の3点の新しい知見が得られた。①fからPまでの段階的な強弱法。②ダンパーペダルの音響効果を伴う場合と伴わない場合の演奏効果の相違。③トルコペダルを打ち込んだ後にそのまま踏み続ける場合と急速にペダルを上げる場合との演奏効果の相違。3.ファゴットペダルに関してはシュタイヤー=ルビモフの先例があるが、6種のペダルを併用させる事によってさらに多様な使用法が考えられ、使用個所についてもより多くの事例を提示できる可能性が明らかとなった。4.現代のピアノ演奏法の常識を超えた強弱記号(pppからfff)は、モデラートあるいはダブルモデラートとシフトペダルを同時あるいは別々に使用し、その組み合わせ等によって段階的にピアニッシモ方向にダイナミックレンジを広げていくことによって表現可能である事が明らかとなった。 以上の演奏法は第一回目の録音セッションで記録されている。本年度の主な録音曲目は以下の通りである。 D773〈アルフォンソとエストレッラ〉のための序曲 、D813創作主題による8つの変奏曲、D814 4つのレントラー 、D818ハンガリー風ディヴェルティメント、D819 6つの大行進曲 よりEs, g, h, D824 6つのポロネーズ (2) D, A, E、D859 大葬送行進曲 ロシアのアレクサンドル1世の逝去に寄せる、他
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