○今回の研究では一つの足で同時に2つのペダルを踏む奏法が有効であることが明らかとなった。①パターン1左足:シフトペダルSとバスーンペダルBを同時に踏む。右足:ダンパーペダルDとモデレイターMあるいはトルコペダルTを踏む。このパターンを使用すれば連弾においてS×B+D+M+Tという5本ペダルを同時使用する奏法も可能である。②パターン2左足:S×BあるいはSかB。右足:つま先を内側に曲げ、踵側をM、つま先をDに配置し同時に踏む。Dの踏み替えは右足親指の上下によって操作する。ソロ演奏においても展開可能な奏法。○以上のことから1820年代のウィーンにおける6から7本のペダルを持つフォルテピアノは、多様なペダルの組み合わせによる演奏効果を楽しむことの可能な連弾に対応した楽器であったこと、6本のペダルが備わっているフォルテピアノのペダルの間隔が現代のピアノに比して狭いのは、同時に2本のペダルを踏むことが想定されていたからであるということが明らかとなった。 ○またトルコペダルの多様な表現力についても本研究によって明らかとなった。以下に表記法とともに列挙する。T=太鼓まで鳴るように底まで踏み込みそのまま踏み続ける最も一般的な奏法。HT=太鼓がならないように浅めに踏みシンバルとベルを鳴らす。t=太鼓まで鳴るように底まで踏み素早く戻す、太鼓が主に鳴っているように聞こえる。ht=太鼓がならないように浅めに踏みシンバルとベルを鳴らし素早く戻す。tb=ベルのみが鳴るように極浅く踏む。PT=太鼓、シンバル、ベルが鳴らないように予め底までペダルを踏み、シンバルが接着している音域の鍵盤を奏することによってシンバルを鳴らす。○以上の奏法はダンパーペダルのon、offと併用するあるいはffからpまでの強弱をつけることによって多様な表現が可能となる。 ○上記研究の最終成果は録音によって示される。本年度は3回目の録音セッションを行った。
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