3年目の研究成果は、2016年3月19日、9時30分から17時30分まで沖縄県立博物館・美術館で開催した第三回のシンポジウム「文芸に表象されたジュリ/芸能者としてのジュリ」に集約される。7時間に及ぶシンポジウムは文芸においては法政大学教授川村湊氏に「韓国の妓生とその表象」、仲程昌徳元琉球大教授に「沖縄の小説作品に登場してくるジュリ(尾類・遊女)たち」の題で講演をしていただき、午後の部は「歌・三線、箏に優れた戦前の女性芸能者」について仲村善信氏が「女性歌者と琉球音楽」について詳細な音源分析を発表し、多嘉良和枝氏と瑞慶山和子氏が戦前を代表する芸能者多嘉良カナと桜家音子についてお話し、歌・三線と舞踊を実演していただいた。川村氏の講演はアジアにおける遊里の比較研究、また遊里の芸能や文芸への視野を広げることになった。それは広義にはアジアのジェンダー&セクシュアリティを包摂していく可能性を持っている。仲程氏の講演の中にも台湾の琉球遊女が登場する小説が含まれていた。
2015年4月から琉球古典音楽研究家&流楽ボイストレイナーの仲村善信氏が共同研究者として本プロジェクトに参加し、氏を通して琉球音楽の師範の方々、また戦前の辻の芸能に詳しい方々へのインタビューが可能になった。氏がテーマにしている「女性歌者と琉球音楽」の探求が思いがけない出会いをもたらし、戦前の辻遊廓の芸能者のアイデンティティが一部明らかになった。また戦前の女性歌者の音源の調査・分析ができた。
「芸能者としてのジュリ」のテーマは、プロの芸能者としてのジュリの姿が立ち現れた。沖縄芸能史の中に遊廓の女性たちを明確に位置づけることができた。これが最大の成果である。
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