研究課題/領域番号 |
25370175
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 文星芸術大学 |
研究代表者 |
宮北 千織 文星芸術大学, 美術学部, 教授 (90645201)
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研究分担者 |
前田 力 文星芸術大学, 美術学部, 准教授 (00401464)
上野 勝久 東京藝術大学, その他の研究科, 教授 (20176613)
荒井 経 東京藝術大学, その他の研究科, 准教授 (60361739)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 山車 / 建築彩色 / 日本画 / 彩色技法 |
研究概要 |
本年度は、本研究の中心的な研究対象となる宇都宮市旧新石町山車・火焔太鼓の菊彫刻に関する彩色材料の調査ならびに色彩表現の記録を行い、保存修復処置の一段階である旧彩色の掻き落とし作業を通して、彩色下地や彩色層の積層状況等を調査した。一連の調査研究に際しては、宇都宮市教育委員会ならびに宇都宮市民有志による山車復活プロジェクト実行委員会と連携しながら情報の共有を図った。 菊彫刻の彩色の現状を記録する「見取り図」は、山車彫刻の専門家による指導の下で研究協力者ならびに文星芸術大学で美術を専攻する学生が作成し、年度内に全13点の見取り図を完成させた。また、蛍光X線分析等の自然科学的手法による彩色材料の成分分析を行って使用されている顔料を推定した。蛍光X線分析の結果からは、幕末から明治前期に繁用されながらも現在では使われなくなっている人造岩絵具の花紺青の使用が推定されるなど有益な情報が得られており、平成26年度の保存科学会での発表を予定している。 研究初年度となる本年度は、研究対象の山車が宇都宮の地域文化財であることに鑑みて、本研究の取組みを広く市民に伝えるための展覧会(平成25年11月28日~12月3日 於文星芸術大学)ならびに公開研究会(平成25年12月2日 同会場)を開催し、多くの市民の観覧を得られたほか、同年11月28日の下野新聞で記事掲載、栃木テレビでニュース報道されている。この他、山車復活プロジェクトが企画した市民対象の展示への参加を通して、本研究の告知に努めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の中心的な研究対象である山車・火焔太鼓の菊彫刻について、現状調査や修復作業を通した調査から具体的な成果を得ることができ、展覧会や公開研究会、マスコミ報道、学会発表(次年度予定)を通して充分な社会への発信ができている。 しかし、彩色の見取り図作成作業に予想外の時間を要したため、近隣地域の山車彩色調査などを進めることができなかった。また、次年度に計画していた旧彩色の掻き落とし作業からの調査研究を本年度に行うことになった(火焔太鼓全体の復元作業との兼ね合いを勘案)ことから平成27年度分の予算を本年度に前倒すことになった。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、宇都宮市旧新石町山車・火焔太鼓の彩色調査を中心としながらも、幕末を含む明治・大正期の山車や建造物彩色に関する総合的な調査研究を目的としているが、本年度ならびに平成26年度においては、平成26年10月に復元竣工を予定している火焔太鼓の調査研究を集中的に実施することが現実的となっている。 平成26年度には、火焔太鼓の菊彫刻に幕末から昭和初期に施された旧彩色の調査結果を基に、復元彩色案を取りまとめて、適切な材料選定と技法選択による彩色の実践を行っていく。平成27年度には、近隣地域に現存する山車の彩色調査や神社仏閣等の建造物における彩色調査に研究対象を拡大して基礎情報を収集するとともに、火焔太鼓における彩色技法との差異を検証していく。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度には、研究対象である火炎太鼓の菊彫刻部分に関する彩色材料調査を日本画技法、文化財修復、自然科学といった多角的な視点から調査をおこなった。 年度の最終段階において、次年度におこなう復元彩色の計画を関係研究者全員の出席のもとでとりまとめる検討会議で諮る予定であったが、実材を用いた彩色サンプルの作成に十分な日数を確保すべきと判断したことから、同会議を平成26年6月に延期した。そのために、検討会議に関わる旅費を次年度に繰り越すこととなった。 繰り越した研究費は、平成26年度におこなう火炎太鼓・菊彫刻の復元彩色に関する検討会議の費用に充てる。 主に東京近郊在住の研究分担者や研究協力者が、会場となる栃木県宇都宮市の文星芸術大学まで移動するための交通費として使用し、一部を資料作成費に使用する。
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