研究課題/領域番号 |
25370176
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研究機関 | 共立女子大学 |
研究代表者 |
木戸 雅子 共立女子大学, 国際学部, 教授 (10204934)
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研究分担者 |
木戸 修 東京藝術大学, 美術学部, 教授 (10126302)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 近現代ギリシャ美術史 / 近現代ギリシャ彫刻 / ギリシャ公共彫刻 / 近現代ギリシャ史 / 比較文化 / 国際研究者交流 / 国際情報交換 |
研究実績の概要 |
昨年度に引き続きアテネ美術大学の彫刻科主任教授のヤニス・ラパス氏、同学科のアフロディティ・リティ教授、アテネ工科大学建築科教授のヴァナ・クセヌ氏、元アテネ美術大学彫刻科教授のセオドロス・パパヤニス氏、の四人の現役彫刻家と連絡を取り合い、本課題についての情報交換、ディスカッションを重ねた。現地調査は5月と3月に行い、当初の計画であった上記彫刻家と共同研究者木戸修による共同制作をアテネで行い、若手の作家も招待して小規模な彫刻シンポジウムを開催するプロジェクトの話し合いを進めた。木戸修が秋に約2か月アテネに滞在し、アテネ美術大学のラパス氏のアトリエで作品制作をしつつ、若手作家に日本の現代アートについて講義を行い、両国の現代アートに生きるそれぞれの過去の記憶の表象についてディスカッションをするという計画を立て、本課題の資金では不足する資金をオナシス財団に申請した。同財団は、文化・教育に関わる競争的資金として大変重要な役割を果たしており、本研究課題で共同研究をしている上記4氏及び、アドヴァイザーとして参加しているテサロニキ大学の現代美術研究のアンドニス・コティディス教授等はその財団のアドヴァイザーでもあり、オナシス財団からの資金提供は可能だとみられていたが、急激に悪化しているギリシャの経済危機の影響で状況が大きく変化したため、大方の予想に反して資金を確保することができなくなった。そのため本年度は、上記4人の制作現場の視察を中心に現代ギリシャの作家たちが置かれている状況を調査し、それぞれディスカッションを重ねた。その都度現在進行中の顕著な芸術活動の情報を集め、多くの若手作家たちにもインタビューをすることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度に引き続き、アテネの美術大学の彫刻科の主任教授のヤニス・ラパス氏、同学科のアフロディティ・リティ教授、アテネ工科大学建築科の教授で彫刻家のヴァナ・クセヌ氏を中心に、現代のギリシャの美術活動における彫刻のジャンルの状況と日本のそれを比較しつつ、両国の伝統や歴史を踏まえたうえで現在そして将来に向けて三次元的美術表現としての彫刻作品制作における新たな可能性の模索についてディスカッションを重ねることができた。昨年度の計画では、研究分担者木戸修が2か月アテネ美術大学に滞在し、彫刻科のラパス氏のアトリエで同氏と共同制作をしながら、同大学の学生や卒業生の若手の作家とともに実際の制作の現場で両国の現代アートの現況の相互理解につとめ、同大学の美術館で最終的に展示をする予定を立てていた。しかしギリシャの経済危機による急激な経済状況の悪化で、予定していたギリシャ側からの滞在施設や費用の提供が不可能となり、長期滞在及び、製作費などが不足しこの計画は進めることができなかった。 実際の共同制作は次年度に何等かのかたちで行うように調整を進めつつ、今年度はこうした困難な経済状況にあっても活発に作品を発表しているラパス氏、リティ氏、クセヌ氏の作品を中心にその活動の現場を視察した。ギリシャは従来公共的なスペースに大規模な彫刻作品を設置するという大型プロジェクト活動が活発であった。その規模と数は日本のそれとは比較にならないほどである。従来は企業がもっている財団が芸術活動に潤沢な資金を提供してきたからそれが可能であったが、現在はそうした資金が全く得られなくなっているにも関わらず、上記の作家たちが相変わらず大型プロジェクトに関わっているのは、EUの文化政策の枠組みによるものであることがよくわかった。
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今後の研究の推進方策 |
ギリシャが現在置かれている非常に困難な経済状況にあっても、ギリシャのアーティストたちが積極的に作家活動を行っている状況がよく把握できた。ギリシャの美術教育界の中心をなす作家4人とギリシャ現代彫刻史研究の重鎮であるテサロニキ大学のアンドニス・コティディス教授らとディスカッションを進め、当初の計画であるギリシャと日本の作家が共同制作をし、その現場で若手の作家と日本の彫刻史、伝統を通して現代の作家たちが何を生み出そうとしているかということを相互に理解する機会としてワークショップを開催する。場所はヴァナ・クセヌ氏のアトリエ(エヴィア島)とラパス氏のアトリエ(アテネ郊外)で、7月にラパス氏、クセヌ氏、リティ氏、セオドロス・パパヤニス氏と日本側から本研究課題代表の木戸雅子と共同研究者木戸修、及び日本の若手アーティストも参加して共同制作を行い、展示をして公開する。ヴァナ・クセヌ氏のアトリエでは美術評論家にも参加してもらって小規模の彫刻シンポジウムの開催を目指す。 本研究課題の資金では費用が賄えないため、本年度と同じく外部資金の調達が不可能となった場合でも、何等かの方法によって本研究の主眼である両国の現代作家たちの作品制作に生きる過去の記憶と現在の表象の世界を多角的に検討する機会としたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた彫刻シンポジウム開催が、資金不足のために実現しなかったため次年度に繰越をして次年度にシンポジウムの開催費用にするため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の7月~8月にギリシャのエヴィア島のヴァナ・クセヌ氏のアトリエで4人の作家と共同制作をして、小規模の彫刻シンポジウムを行う。各人の滞在費の一部及び制作材料の一部に使用する。
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