平成27年(2015)度は、前年度に引き続き、譜入り浄瑠璃本、番付・プログラム類、浄瑠璃関係雑誌等、義太夫節人形浄瑠璃の上演関係資料を所蔵する公的機関(大阪市立中央図書館、国立文楽劇場、国立劇場、早稲田大学演劇博物館等)の資料調査を進め、これまでの研究成果報告として2回の学会発表を行った。 平成27年(2015)12月12日に開催された歌舞伎学会秋期大会(於共立女子大学)では、近世以来の曲節の伝承を持ちながら、昭和32年(1957)以降上演の途絶えている近松門左衛門作品「博多小女郎波枕」の大正・昭和期における上演史を辿りながら、曲節の伝承や上演台本の改訂問題等について検討した。また、平成28年(2016)1月29日に開催された近松の会例会発表(於早稲田大学)では、「博多小女郎波枕」のラジオ放送録音を取り上げ、上演台本の改訂が作品内容の解釈に及ぼした影響などについて検討を行った。 上演台本(譜入り浄瑠璃本)と同時代の新聞・雑誌の劇評や芸談類、録音記録を活用しながら、具体的な上演の在り方を詳細に辿る研究方法は、これまで、浄瑠璃関係雑誌や録音資料の閲覧・入手の困難さから充分に行われてこなかった感があるが、本研究課題の成果によって、それが可能となった。 本年度はまた、演劇博物館に収蔵される未登録の新出浄瑠璃関係資料の調査を行った。同資料は、近代における義太夫節のレコード録音、ラジオ放送に関する資料で、未だ不明な点の多い録音資料に関する今後の研究に多いに資するものと期待される。
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