研究課題/領域番号 |
25370188
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研究機関 | 東京工芸大学 |
研究代表者 |
伊藤 剛 東京工芸大学, 芸術学部, 教授 (30551519)
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研究分担者 |
松中 義大 東京工芸大学, 芸術学部, 准教授 (00318908)
木寺 良一 東京工芸大学, 芸術学部, 講師 (90460170)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | マンガ / マンガ表現論 / 用語法 / コーパス分析 / コマ / フキダシ |
研究実績の概要 |
前年度までの、マンガ技法書、研究書からの語彙の抽出作業およびその分析を踏まえ、今年度においては、技法書と理論的な研究書についてコーパス分析を行った。<要素>を名指す名称間の文中での出現パターンからの分析から、これらの名称が指し示す概念間の関係に、その文章が書かれた目的や機会に対する依存度の存在が確認された。一方、本研究は、マンガを構成する諸要素(ここでいう「要素」とは、もっぱら線で構成され、紙面上に視認できる形で示されたものを指す)と、それらを名指す名称との対応が、人々によってどのようになされているかを知る方法論の探求という問題に行き当たった。これは、マンガを構成する諸要素と、理論的に考えられる諸概念とを形式的な紐づける根拠を一意的に示すことができないことに由来する。 そこで、今年度の研究では、前述のような問題点を考慮し、Webを用いて「用語の認知度」と並行して「図示された要素との対応」を回答させるアンケート調査を実施、主に「マンガを描いたことがある初心者」という水準の揃った回答者約500名を得ることができた。アンケート結果からは、用語としての認知度にかかわらず、認知されていれば、おおむね「要素」との対応は良くとられているという一般的な傾向が確認されたが、マンガを構成する概念のうち最も基本的なものと目される「コマ」「枠線」に関しては、要素との対応が明瞭ではなかった。ここから、自然言語と扱いうる「コマ」名称の使われ方と、「コマ」概念の論理的な定義困難性が大きく関係していることが浮かび上がった。このような相関と、書籍等のコーパス分析との結果を併せることで、今後考えられる「用語法」の確立とは、それがいかなる形であれ、目的と機会に依存することは避けられず、概念と要素の結びつきを明瞭に示す方法論および、概念体系をアド・ホックなものに留まらないものとする必要が示唆された。
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