研究課題
本テーマの中核は、1948年に誕生し、2002年に解散した、沖縄の女性だけの琉球歌劇団、乙姫劇団の『時代幻想歌劇・真夏の夜の夢』の研究にあった。その為、乙姫劇団の1960年の台本『時代歌劇・真夏の夜の夢』(間好子作)の英訳の完成、1990年の「乙姫劇団40周年公演」のために同作品に追加された場面の検証(琉球語から日本語共通語への翻訳及びDVD記録の聞き取りには大嶺佳代氏の協力を得た)と同DVDの英語字幕作成に多くの時間を費やした上で、同作品の初演とされている1954年の「乙姫劇団興業日誌」を分析し、また、1960年版の台本に言及されている、「西森」(首里城の北側に位置する聖域)の現地調査もおこなった。同時に、乙姫劇団の後身である「劇団うない」のハワイ公演への同行を含む、元劇団員の密着取材もおこなった。その結果、『時代幻想歌劇・真夏の夜の夢』は、シェイクスピア劇の単なる「地域化」、「アジア化」された翻案劇の例ではなく、同劇団のシャーマン的な一面も反映させた作品であり、さらに、同作品の「背景」とされている、幻想の「うちばー」王国には、重層的な「故郷」への想いがあることが確認された。また、琉球歌劇版との比較の為に、宝塚歌劇版の『夏の夜の夢』の変遷、ピーター・ブルックの同作の公演後の日本の演出家(主として野田秀樹と蜷川幸雄)の『夏の夜の夢のおけるパックの表象、さらに、海外には"Okinawan Midsummer Night’s Dream"として紹介されている、中江裕二監督の映画『さんかく山のマジルー』の分析もおこなった。野田秀樹と中江裕二監督には「夏の夜の夢」の妖精を消えゆく故郷の表象と捉えている、という共通点があった。成果は主として、ロンドン大学ロイヤル・ホロウェイ校にて中間報告をしたほか、FIRT(国際演劇学会)等、海外の学会で5回、国内の学会で2回、報告をした。
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