研究課題/領域番号 |
25370191
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
竹中 悠美 立命館大学, 先端総合学術研究科, 准教授 (90599937)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ドキュメンタリー / 写真史 / アメリカ美術 / フォトジャーナリズム / 文化政策 / ニューディール期 / 芸術文化政策 / 国際文化交流 |
研究概要 |
本研究は、研究対象をアメリカにおいてドキュメンタリー写真を確立したとされる大恐慌期の「FSA写真(ニューディール政策の一環として、農務省の農業安定局(FSA)で1935年から44年まで実施された記録写真プロジェクト)」とし、特に農民の〈貧困〉と同時期に頻発した自然災害による〈被災〉の表象を中心に、FSA写真の意義と問題を政治・経済・文化が交叉する社会的流通のプロセスと受容の文脈から解明することを目的とする。 本年度は、(1)文献資料と視覚資料の収集と、それらの資料をもとにFSA写真の評価と保存に寄与した美術の文脈への導入を調査し、1938年にニューヨークで開催された「第一回国際写真展」と「アメリカン・フォトグラフ」、そして後者に続くニューヨーク近代美術館での写真展の重要性を明らかにし、「アメリカ写真」という概念の確立という観点から、民族藝術学会での口頭発表を経て、学会誌『民族芸術』に論文を発表した。 (2)上記の流れのキーパーソンとしてニューヨーク近代美術館写真部ディレクターであったE・スタイケンの重要性が浮上し、彼とFSA写真の関係、そして彼が企画した写真展についての調査を重点的に行った。その中で、ルクセンブルクで保存・展示されている「ザ・ファミリー・オブ・マン」展と「ザ・ビター・イヤーズ」展の現地調査を行い、学芸員へのインタビューとルクセンブルクの他の美術館、並びに周辺国であるベルギーとオランダの美術館も調査し、なぜFSA写真展がルクセンブルクで保存・公開されているのか、それはルクセンブルクにおいて、そしてアメリカにとってもどのような意味があるのかを論文「ルクセンブルクのスタイケン・コレクションについて─パブリック・ディプロマシーとしての二つのアメリカ写真展─」にまとめ、『カルチャー・ミックス』(岡林洋編、晃洋書房、2014)で公刊した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ルクセンブルクでの調査が予想していた以上に重要な結果となり、その点で研究は計画以上に進んだが、その分、アメリカ本国への出張調査が行えず、その面での研究は計画していたほどに進まなかった。
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今後の研究の推進方策 |
1.アメリカでの現地調査を行う。1930年代に移動農民のキャンプがあった場所や、FSAの写真家が被写体とした第二次世界大戦中の日系人収容所などを現地調査し、検証と資料収集を行う。 2.文献・視覚資料調査としては、1930年代のドキュメンタリー文化を写真だけでなく、映画や文学にも広げ、特に災害と被災者の表象を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
申請時に購入を予定していたマイクロフィルム資料「FSA-OWI written records, 1935-1946」と「Roy Stryker papers, 1912-1972」が、申請後に所属研究機関の図書館資料として購入されたため、本科研費で購入する必要がなくなったため。 前年度に引き続き、次年度も資料収集のための物品購入費と情報収集のための旅費としての使用が主となる。特にアメリカでの現地調査と資料収集のための旅費と物品費としての使用に重点を置く。また、成果公開と意見交換を目的とした学会等での発表のための旅費および諸経費としての使用も増える予定である。
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