本年度は、昨年度の調査をふまえ、宮川一夫による書き込みおよびフィルムのカット尻貼りこみのある撮影台本を対象に、デジタル化を行った。具体的には『東海水滸伝』(1945年、大映京都、伊藤大輔・稲垣浩監督)から『鬼の棲む館』(1969年、大映京都、三隅研次監督)までの19作品であり、選定基準は、台本の紙の傷みが激しく、貼り込まれたカット尻も粘着しているなど、資料状態が悪く、複製作成が喫緊の課題となっているものである。 本研究の目的である「③当該資料のデジタル化に対する著作権等の諸課題とその解決モデル」については、台本上のシナリオ(テキスト)、書き込み、カット尻のコマ、台本自体、それぞれ権利者が異なることから、デジタル化の成果公開については、これら各権利者の許諾をクリアする必要があり、そのため1頁ごとに1画像を作成し、各権利情報を蓄積する方法をとった。もう一つの目的である「④当該資料のデジタル化にかかわる技術的諸問題とその解決モデル」では、シナリオ(テキスト)、書き込み、カット尻のコマが、それぞれ材質も色彩も異なるうえに、確認画像に求められる精度も異なることから、それぞれに適した撮影方法を採用した。 なお、資料保存の観点から、状態が悪い撮影台本のデジタル化を最優先課題とし、シンポジウム等の当初計画していた報告会は開催せずにその経費をデジタル化に回したことを付言しておく。
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