『源氏物語』全巻注釈の早い例である『河海抄』をとりあげ、引用される歴史記述に注目し、作品の内容を理解するためという注釈認識を相対化するような特質について研究、六国史以後、正史をもたなかった日本で、歴史認識はどのように構成されたかを考察した。『河海抄』の、漢字をあてて典拠を記す注が、歴史書を出典とする言葉として中世の古辞書類に採られていることの意味を、とくに国学者の研究に注目して考察した。さらに、『河海抄』本文研究の成果をもとに、従来の文献学的方法に閉ざすのではない、『源氏物語』、『源氏物語』注釈が実際に生きていた空間から本文を見きわめてゆく方法を、学会誌等への論文執筆によって提示した。
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